県内外に多くのファンを持つ綾の湧き水。ペットボトルに森の恵みをたっぷりと詰め込む

先人が残した森、人々の暮らし潤す

 綾町は綾北、綾南の二つの川が流れ、町のあちこちで水がわき出る水の里だ。その源は町北西部に広がる照葉樹林。長い年月をへて森がはぐくむ清らかな水は、農業、生活用水として人々の暮らしを支えている。

 森は広さ約1700ヘクタール。日本最大級の照葉樹原生林として知られる。高木、亜高木、低木の三つの林相を形成。腐葉土が堆積(たいせき)した土壌が豊富な水を蓄える。林野庁は1995年、「水源の森百選」に選定している。

 町照葉樹林文化推進専門監の河野耕三さん(62)の案内で、綾南川沿いの川中自然公園近くの森に入った。川のせせらぎが耳に優しく、ひんやりした風が体を優しく包む。歩を進めると、30メートルのイチイガシの大木が目に飛び込んできた。空に向かって幹をまっすぐ伸ばし、大きく広がった枝葉が空を覆い尽くす。

 「カサッ」。足元に目をやる。落ち葉が積み重なり、クッションのようになっていた。「落ち葉や土中の生き物たちが水を蓄えてくれる。だから大雨が降っても川がはんらんせんとよ」。河野さんは森の持つ「緑のダム」機能について話す。

 高度経済成長期に一部伐採計画が持ち上がったが、66(昭和41)年に町長に就任した故郷田実さんらが官民挙げて阻止し、森は守られた。2005年から、照葉樹林を保護・復元し次世代に継承する「綾の照葉樹林プロジェクト」(綾プロ)の取り組みも進む。先人が残した森は地球環境時代を迎え、まばゆい輝きを放っている。(写真部・西村公美)

【メモ】町は森林浴で心を癒やす遊歩道を3カ所設けている。川中自然公園コースは照葉樹林を満喫できると人気。ガイドが案内。希望に応じて距離を変更できる。町森林セラピー推進協議会事務局TEL0985(77)0100。