乾燥してほぐしたトウキビの実は10分の1ほどの大きさにひかれ割りとうきびになる

山あいの風物詩腹を満たす黄色い粒

 白米に彩りを添える黄色い粒。見た目に美しいおにぎりをほお張ると、プチプチとした食感とほのかな甘さが口いっぱいに広がり、思わず2個、3個と手が伸びる。

 乾燥させたトウキビ(トウモロコシ)の実のひき割りをまぜて炊いた「とうきびごはん」。高千穂、五ケ瀬、日之影など高千穂地方のふるさとの味だ。米が貴重だった時代、「割りとうきび」でかさを増し、人々の腹を満たした。高千穂町史によると、大正時代は雑穀の作付面積の6割を占め、食糧や家畜飼料に利用されていたという。

 トウキビは盆明けに収穫。束にして軒下の竹さおに掛け、じっくりと乾燥させる。そしてやまやまから吹き降ろす寒風を受け、うまみを蓄える。軒下を彩る黄色いのれんは今でも山あいの冬の風物詩。先人の知恵が詰まったとうきびごはんは1986(昭和61)年、ふるさとおにぎり百選に選ばれた。

 「トウキビを入れんと物足らんね。ごはんがぐっと甘くなるとよ」。そう話す日之影町七折の藤高アサエさん(81)は自家製の割りとうきびを入れて毎日食卓に上げる。「今は米が多いけど、昔はトウキビばかりでね。米はほんの少し」と懐かしむ。

 家々の軒先で揺れる干しトウキビも、今や回想の風景となりつつある。同町七折・戸川地区の坂本博さん(71)宅は今年は250本と最盛期の10分の1。「昔はトウキビが地面に付くほど干しよったけど、最近は食べる人が減ったからなあ」。食生活の変化に加え、作業の煩雑さが生産量減少に拍車を掛けているという。

 「里芋と一緒に炊いてもっちりとした食感に」「もち米を入れると香り高く仕上がる」―。お薦めの味わい方は人それぞれ。甘い香りと素朴な味に出合いに、初冬の高千穂路へ出掛けてみてはいかが。

 =毎月1回掲載。12月は休みます=

【メモ】

 割りとうきびの量は、米1合に対して大さじ1が目安。米と一緒にといで一晩置き、とうきびの量だけ水を多めに入れて炊く。日之影町では日之影温泉駅で買うことができる。TEL0982(87)2690。