息のあった作業で進む「大根突き」。大根の頭としっぽを切りそろえ、青首が多い場合は皮をむくなど下準備にも手間を惜しまない

寒風に白く輝く

 茶畑に沿って延びる杉林の中で、ずらりと並んだ薄切り大根が白く輝いている。乾燥すると干しイカに似ていることから「いかんて」とも呼ばれる割り干し大根。国富町八代にある新小田秀子さん(67)=同町深年=の大根干し場では、ひもにつるしたばかりの500本分の大根が冷たい風に揺れていた。

 割り干し大根は千切り大根と同様に同町の特産品。大根を厚さ約5ミリにスライスし、頭部分を4センチ残して数本切れ目を入れる。これを半日陰の杉林などでひもにつるし、3日ほど天日干しすると出来上がる。乳白色に乾燥し甘い香りのするいかんては食物繊維、カルシウム、鉄分を多く含み、主に煮付けや漬物に利用される。長期保存でき、みそ汁の具にもってこいだ。

 いかんて作りは秀子さんの父・黒木清海さん(88)が以前行っていたもので、4年前に秀子さんが場所や道具を譲り受けて復活させた。清海さんや周辺農家のアドバイスをもらいながら1人で始めたが、夫の善博さん(68)が退職を機に3年前から手伝うようになったという。大根引き、運搬、薄切りにする大根突き作業は体力のいる仕事だが、夫婦二人で楽しみながら取り組んでいる。

 今年は9月上旬に種をまき、芽が出たところで台風被害に遭い全滅。再度の種まきで3週間ほど生育が遅れた。例年、11月には始まる大根干しも12月に入ってようやく開始。秀子さんは「大根の生育や干し具合は天気との勝負」と苦労を語った。

 大根干し作業はグラウンドゴルフ仲間も手伝いに来てくれる。その一人小坂ミヤコさん(68)=野尻町=は「ずらーっと並んだ大根は白くてとってもきれい。これぞ冬の風物詩」とほほ笑んだ。

 いかんて作りは2月下旬まで続く。秀子さんは「千切りとはまた違う手間がかかるいかんては年寄りの仕事よ」と謙遜しながらも、夫や友人とともにライフスタイルのひとつとして楽しんでいるようだ。

【メモ】本県は日本一の千切り大根の産地で、全国の90%強を生産。主産地の国富町の出荷量は年間約600トンで、そのうち13トンが割り干し大根。2015年度の生産戸数は千切り大根135戸、割り干し大根19戸。全国的な人気と大根不足で価格は近年、上昇傾向にある。