泥を落とすとレンコンの白い肌が姿を現す。節が長く、湾曲しているのが特徴でもある

種茂公残した冬の味覚

 光に透けた大きな葉が黄緑色に輝き、泥水の中から伸びた茎は太く大人の背丈より高い。新富町日置にある湖水ケ池(こみずがいけ)をジャングルのように覆い尽くすのは無数のハス。白い花を咲かせた夏から景色が一変し、池の所々でレンコンの収穫が始まっている。

 高鍋藩7代藩主・秋月種茂公が藩財政立て直しのため地元住民に植えさせたのが始まりと言われており、約300年がたった現在でも代々レンコン掘りが続いている。湖水ケ池はほとりに立つ水沼神社(宇都宮正和宮司)の所有地であり、レンコンを掘る権利を持つのは神社の氏子のみ。現在は約40人の氏子が池を区切りそれぞれの区画を管理している。

 「こつさえつかめば簡単よ」と話すのはレンコン掘り「名人」の中村浩二さん(59)。ウエットスーツに身を包み、沖に行けば深さは2メートルほどにもなる池で、首まで泥水につかって作業する。ホースで泥をかき出しながら足先でレンコンを探り、折れないように慎重に引き上げる一連の作業は体力勝負。この日は長いもので約2メートルの「大物」を10本以上収穫した。縁起物として知られるレンコンは、需要が高まる年末年始にさらに時間をかけ大量に収穫するという。

 一方、時代とともに池でレンコンを掘る人が減少し、後継者不足という現状も。氏子で一番の若手が50代と高齢化が進んでいる。「この地区で子どもの遊びと言えばレンコン掘りだったのに。このままではいつかレンコン掘りも絶えるかもしれんね」と宇都宮宮司(70)は唇をかむ。今はまだ管理が行き届いているが、10、20年後を考えると心配は絶えない。

 「ここは帰省してきた人が見てほっとできる風景。守っていきたい」と宇都宮宮司。お盆にはハスの花が仏壇に供えられ、冬にはレンコンが食卓に並ぶ。「水神様のレンコン」が地域に根付いていることを感じることができた。

【メモ】湖水ケ池で掘るのは「糸引きレンコン」。一般的なレンコンに比べ節が長く、独特の粘りとホクホクしたやわらかさが特徴。煮付けやきんぴら、粗くすり下ろしてみそ汁に入れてもおいしい。昨年行われた調査で奈良県大和郡山市のレンコンと同じDNAを持つことが判明した。