二番茶の摘み取りに向け、枝を整える作業に追われる木下さん

リアス式の美しい海岸と緑輝く茶畑


 山肌を緑に染める茶山越しに、リアス式の入り組んだ海岸線が浮かび上がる。日向灘を望む延岡市北浦町。入り江ごとにある天然の良港は、巻き網漁水揚げ高県内一を誇る漁業の町を築き上げてきた。山間部では茶の栽培も営まれている。人情味あふれる漁師町の風情と豊かな農村風景はどこか郷愁を誘う。

 同町地下地区にある標高200メートルほどの小高い山。海に背を向けるように茶畑が広がり、地域住民は親しみを込め「茶山」と呼ぶ。開墾が始まったのは1969(昭和44)年。木下豊年さん(70)ら20人の若者が岩や雑草だらけの荒れ地に手を入れ、早出し茶の一大生産地をつくり上げた。現在4戸の農家が11ヘクタールで「さえみどり」「やまなみ」など7品種を栽培している。

 木下さんの案内で海を望む高台に登った。「あのころの苦労を思い出す。この眺めは地区の宝よ」。濃緑に染まる自慢の茶畑に二番茶が芽吹き始めていた。

 5月中旬、市振の古浦新港は巻き網漁船の水揚げで活気にあふれた。この日の漁獲量はウルメイワシ40トン。仲買人たちが厳しい目で次々と競り落とし、入札したトロ箱を運ぶフォークリフトがせわしなく行き交う。水揚げのにぎわいは漁師町ならではの風景だ。魚群を網で囲い込む伝統の巻き網漁も、漁獲量は90年の9万7700トンをピークに、昨年は4分の1の2万3460トンまで落ち込んでいる。

 しかし次代を担う若手が育っている。「大漁の日は夜通しの漁のつらさも吹っ飛ぶ。若い力で町を盛り上げたい」。乗組員の宇戸田秀和さん(29)は、ふるさとを愛する心意気に燃える。

【メモ】 茶山は古江交差点から車で約15分。国道388号を三川内方面へ北進し「地下」の看板を右折。次の分岐点を払川展望台方面へ向かう。特産品は道の駅「北浦」で買える。TEL0982(45)3811。