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1万本のバラ、天の愛妻へ 市道沿い一変、憩いの場

2016年5月9日掲載

野辺保雄さんが手入れを続け串間市秋山の市道沿いを彩るバラ。今後1週間ほどは見頃が続くという=7日午前

 亡き妻へささげる愛のバラ-。串間市・秋山小近くの市道沿い約100メートルを、1万本を超すバラの花が彩っている。同市串間の野辺保雄さん(64)が昨年から丹精し、今年初めて花を咲かせた。きっかけは、がんで闘病中だった妻を喜ばせようという思い。植え始めて間もなく妻はこの世を去り、花を見せることはできなかったが「誰かに喜んでもらえれば」と手入れを続けてきた。やぶに覆われ人通りの少なかった道は今、住民が集う憩いの場となっている。

 保雄さんは、バラが好きだった妻・敬子さん=享年64歳=の影響で10年ほど前から自宅でつるバラの栽培を始めた。手を掛けた分だけ美しい花を付ける魅力にはまり、自動車販売店の仕事の傍ら、休日に一緒に土をいじる時間が楽しみだった。

 週に3日は趣味のミニバレーに汗を流すほど元気だった敬子さん。2013年11月に痛みを訴え卵巣がんが見つかった時にはすでに病が進んでいた。すぐに手術を受け、日南市内の病院に入院した。

 敬子さんの回復を信じていた保雄さんは、大好きなバラで退院を迎えようと考えた。市の了解を得て、秋山小から500メートルほど北にある、実家のあった秋山地区の市有地約2千平方メートルを整備することに。見舞いのたびに足しげく立ち寄り、せり出した竹やぶの伐採や草払いを続けた。

 初めてバラの苗を植えたのは昨年4月下旬。だが、その10日ほど後、敬子さんは容体が急変し息を引き取った。

 慌ただしく四十九日が過ぎ、家にいても気持ちがふさぐだけ。「誰かに喜んでもらえたら」。しぼんでいた心を奮い立たせ、昨夏から再びバラ園づくりに取り掛かった。

 親戚らに手伝ってもらい、杉製のベンチ3カ所、屋根付きのあずまやを設けた。1年を通して飽きさせないよう、50種を超す四季折々の花々も植えた。1株から始まったバラ園は約30株、すべて咲けば約2万本を超すまでに。菜の花や芝桜が見ごろを迎えた4月は地元の高齢者が花見を開き、バラが咲き始めた5月上旬は地区の仲間とともにバーベキューを囲んだ。

 今、バラは五分咲き。保雄さんによると、今後1週間ほどは見頃が続くという。「妻が好きだった花をみんなに見てもらいたい。自由に立ち寄ってご飯を食べたり、話したりして楽しんでほしい」。訪れた人の笑顔が、天国にいる敬子さんにもきっと届くと信じている。