
「知事が変わった今こそ、議会も変わり、車の両輪として県政を前に進めなければならない」
8日夜、宮崎市大工3丁目の質素な選挙事務所。県議選同市区での当確の報を受け、無所属新人の武井俊輔(32)は感極まった表情で叫んだ。
事務所には東国原英夫知事の付き人の姿があった。武井は早大大学院時代、同じく早大で学んでいた知事と知り合い、政治談議を交わした仲。県議選で知事自身は中立姿勢を保ったものの、武井は知事の改革姿勢の推進を強調する戦術を展開。主な組織や政党の支援を受けずに20人の候補者の中で4位と躍進した。
告示前には議会改革のマニフェストを作成。道州制を見据えた議員定数の大幅削減や費用弁償の見直しなど、聖域とされてきた既得権にメスを入れる意気込みを有権者に示した。武井は「極限まで身を律することが議会に求められている。県民の常識が通る議会にしたい」と気を引き締める。
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東国原県政の発足後、県議会は知事の対立軸と位置付けられ、世間の耳目を集めた。県議選でも知事選のような風が吹くかと予想されたが、投票率は過去最低の55.38%に終わった。その要因の一つに政党支持者の“選挙離れ”が挙げられる。
宮崎日日新聞社が1月の知事選と今回の県議選で行った出口調査の結果を比較すると、支持政党別の投票割合で自民が6.2ポイント、民主が1.2ポイント減少した。対照的に支持政党なしの無党派層が5.7ポイント増えた。
背景には、官製談合の摘発で入札制度改革が進み、選挙に利点を見いだせなくなった業界の事情も見え隠れする。ある建設業者は「県議の口利きで公共工事の指名には入れず、応援する必要性はない」と吐露。業者が事務所に出入りして動員する旧来型の選挙は、機能不全に陥りつつある。
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今回の県議選では、これまで選挙になじみが薄かった若者が積極的に参加するなど、新たな支援の形も芽生えた。
勝利を収めた武井の陣営もスタッフは全員ボランティア。職業は自営、農家、会社員、大学生などさまざま。仕事を優先して出陣式は行わなかった。選対会議も夜に開いたが、全員が集まった日は数えるほど。欠席したスタッフには携帯電話のメールで情報交換することで連絡不足を補った。
男性会社員(39)は「素人でも選挙はできる。勝てることを証明できた」と胸を張った。
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東国原県政の誕生で、変革へのうねりが起こりつつある県政界。県議選でも候補者を政策本位で選ぶ兆しが見え始めた。長年滞留してきた地方政治の流れが、自治再生へ向けて民意とともに“改流”する動きを追った。(敬称略)
【写真】宮崎市役所前の街頭で毎朝、つじ立ちを重ねて政策を訴え続けた武井俊輔=3月28日午前7時半
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当落判明の余韻冷めやらぬ9日午前。新県議に待っていたのは東国原英夫知事のきつい一言だった。投票率が過去最低の55・38%だった感想を記者団に問われ、「議会の無力さへの不信感の表れだったかもしれない」。
摘発された県官製談合に代表されるチェック機能不全、改革の遅れ、政策立案の少なさ…。民意は投票を棄権することで、議会批判を意思表示したというのだ。
10日夕にUMKテレビ宮崎が企画した東国原知事との討論番組には、新県議のうち36人が出演。議会事務局や監査事務局の職員不足を理由に、「県議会が実際に今回の談合を見抜くことはできない」などと現状をアピールする議員が目立った。「なぜ最初からあきらめているんですか」とすかさず切り返す知事。県政をけん引する新たな車の両輪は、きしみながら動き始めた。
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選挙戦では多くの立候補者が、議会改革に取り組むと有権者に訴えた。宮崎日日新聞社が全立候補者に実施したアンケートでは、当選した45人全員が政務調査費について「透明化を図る」または「減額する」と回答。議会活性化策では25人が、これまでは県防災対策推進条例一件しかなかった「議員発議条例の増加」と答えた。
定数については28人が20―40の具体的な数字を提示。15人が一人区の廃止を主張した。選挙期間中も各候補が、「議会を変えていきます」「無駄をなくします」と連呼した。
では「なぜ今まで何もしてこなかったのか」。政務調査費のほかにも交通費などの費用弁償や、全国的にもまれな議員宿舎の存在に厳しい目が注がれる中、「改革に後ろ向きとの印象が付きまとう」と過去を悔やむ県議がいる一方で、「これからどうするかが大事」と開き直る議員もいる。
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改革の実現へ向け、独自色を打ち出そうという動きが初当選組を中心に出始めた。児湯郡区の図師博規(37)、日向市区の西村賢(34)、延岡市区の松田勝則(41)、宮崎市区の武井俊輔(32)は10日午後、宮崎市内の飲食店に集まり、新会派結成について意見を交わした。
目指すのは議員発議条例を増やす政策集団だ。ただ自民党籍を持つメンバーが多く、情勢は流動的。図師は「五つの常任委員会すべてに入るために5人は必要。当選回数や年齢には関係なく参加を呼び掛けていきたい」と語る。
仮に5人の会派が誕生した場合、社民と並ぶ第二会派となり、議会内の台風の目となるのは必至だ。25日の届け出期日に向けて調整が続く。
議会内の勢力図が固まるのはこれから。4年間の議席が約束された今、低投票率をはね返す改革の成果が求められる。(敬称略)
【写真】当選証書付与式前に意見を交わす新人の図師博規(左)と西村賢。新会派発足の道を模索する=10日午前10時40分、県庁講堂
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県議選で議席を失った現職5人はいずれも自民だった。「時代の流れだろうか。政党への逆風もあり、浮動票をつかめなかった」。開票結果が明らかになった8日深夜。無党派層の多い激戦区の宮崎市区で次点に泣いた前本和男(69)は敗因をこう振り返った。
知事選で顕著に現れた既成政党への不信感。県議選では世間の風を敏感に感じ取り、「党公認」という看板を積極的に打ち出すことにちゅうちょする陣営もあった。同市区で当選した現職候補の選対幹部は「自民に対する風当たりが強い」と、候補者の実績や人柄で売り込んだ。
建設業者などの動きが停滞した選挙戦。都城市区の自民現職陣営幹部も「政党公認を掲げて、組織票がとれる時代ではなくなった」と、選挙戦の変化を実感。党公認という“伝家の宝刀”は威力を失いつつある。
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県議会自民党はベテラン4人が引退。現職の落選で改選前の32議席から6議席減らした。自民党県連では「党への不信感の現れではなく、世代交代」と受け止めるが、政党別の得票率は前回を下回り、党勢の低下を懸念する声も。知事選での惨敗を受けて県連内に立ちあげた改革推進委員会で、焦点の無党派対策や党公認候補選定の在り方などを模索する。
一方、国政では政権交代政党を狙う民主も議席を上積みできなかった。街頭演説を増やすなど、反自民票や浮動票の取り込みも狙ったが、労組票以外に支持のすそ野は広がらなかった。
民主党県連の井上紀代子代表は固い保守地盤を理由に「議席を守ることはできたが、まだ『自民対民主』の構図を築くには至っていない。今後の選挙はできるだけ候補者を擁立する」と振り返る。参院選候補者は擁立方針で検討している。
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宮崎日日新聞社が県議選で行った出口調査では候補を選んだ基準で「政党、団体等の推薦」はわずか3・1%にとどまった。有権者の意識の変化に対し、今夏の参院選へ立候補を目指す4人の受け止め方はさまざまだ。
自民党公認の現職小斉平敏文(57)は低投票率に衝撃を受け、「無党派層の絶対的対策がない」。一方、元職の長峯基(66)は「自民党離れが出た。参院選に影響が出るかは分からないが、無党派層が圧倒的に増えれば無所属でもいける」と勢いづく。無所属での立候補を目指す東治男(61)は「変わろうという県民の意識を感じた」、共産の馬場洋光(38)は「自民党の支持基盤も崩れつつある」と追い風を期待する。
変革を求める民意の風にあおられ、政党が有権者と向き合う姿勢をどう変えていくのか。22日投票の統一地方選後半戦が終わると、参院選へ向けた動きは一気に熱を帯びる。(敬称略)
【写真】県議選候補者のポスターが並ぶ自民党県連。政党不信を懸念し選挙戦では「自民党公認」を積極的に打ち出さない候補もいた=宮崎市の県自治会館
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