サッカーの北京五輪アジア2次予選、日本―香港の第1戦は28日、東京・国立競技場で行われる。1996年のアトランタから4大会連続の出場を目指すU―22(22歳以下)日本代表の中で、攻守のキーマンとなるのが本県出身のMF増田誓志(鹿島)とDF伊野波雅彦(FC東京)。小学生のころから切磋琢磨(せっさたくま)してきた2人が、同じブルーのユニホームを着て、アジア、そして世界の舞台へ挑む。
ライバル切磋琢磨
昨年8月、中国・秦皇島で行われたU―21日本代表―U―21中国代表戦。反町康治監督率いる日本代表の初陣で、キャプテンマークをつけた伊野波は、気迫のこもった守備で完封勝利に貢献。増田は攻撃的MFとして勝利を決定づける2点目を挙げた。
2人が最初に出会ったのは、宮崎市選抜チームに選ばれた小学5年生のとき。増田は木花スポーツ少年団(現ヴィラル木花SC)、伊野波は宮崎東スポーツ少年団でプレーしていた。当時のお互いの印象を「うまかった。小学生の中でずば抜けていた」(伊野波)「ボールを止める、けるという基本技術がチームで一番。それに負けず嫌いだった」(増田)と振り返る。
物静かな2人は自然と気が合った。「なぜかは覚えていない。5年生のときにはもうすごく仲が良くて、6年生のときには一緒に遊んだり、家まで行ったり。親同士も仲良くなったので、(中学3年のときに)ブラジルへ短期留学する話も出ましたね」(増田)
増田は学園木花台小から木花中へ進んだが、向上心の高かった伊野波は、東大宮小から県選抜チームの陶山英樹監督(現・県サッカー協会中学委員長、赤江中)のいる生目台中に進学した。中学2年の夏にはブラジルへ短期留学。そこで前日本代表監督のスーパースター、ジーコと出会う。翌年には増田を誘い再度ブラジルに渡り、ともにプロになりたいという気持ちを強くした。
地元の鵬翔高に入学した増田は、すぐに頭角を現わし、その冬の高校選手権で途中出場ながら早くも全国の舞台に立つ。2、3年時には中心選手として全国総体2年連続8強の原動力になった。一方、「どうしても上のレベルでやりたかった」と全国制覇の実績を持つ鹿児島実高(鹿児島)を選んだ伊野波は、名門でのレギュラー争いを勝ち抜き、3年時の全国選手権で4強入りを果たす。
「3年のとき、僕がマークにつかれて一番嫌だったのが、伊野波だった。基本がしっかりしていて、(マークが)ずれない。鵬翔の仲間も同じ意見でした」(増田)。互いに全国クラスの選手に成長していった。
高校卒業後、増田は鹿島に入団。5月の神戸戦でクラブ史上初の初先発初得点を記録し、華々しいプロデビューを飾る。伊野波は阪南大へ。複数のクラブで入団テストを受けたが不合格。プロ入りの夢をかなえられなかった。しかし、2年時に世界ユース選手権(オランダ)に臨むU―20代表に抜てきされ、流れが変わる。
この大会の日本は1勝もできなかった。出場機会のなかった悔しさが、伊野波に1日も早いプロ入りを決心させた。06年、大学を休学し、「アントラーズという選択肢もあったけど、(増田の)ライバルとしてやりたかった」とFC東京へ入団。ボランチやセンターバックとして活躍し、8月には増田とともにU―21代表入りを果たす。さらにオシム監督率いるフル代表にも選ばれた。
最初の出会いから約10年。宮崎で生まれ育った2人のJリーガーの、誇りを懸けた戦いがいよいよ始まる。
指揮官の信頼厚く熊本で21日に行われたU―22米国代表との強化試合。結果はスコアレスドローだったが、反町監督の2人の起用法に信頼度の高さが垣間見えた。
主将に抜てきされた伊野波は、リベロ(3バックの中央)で先発フル出場。両ストッパーと息の合った連係で米国に決定機をほとんど与えなかった。機会を見てゴール前まで駆け上がるなど攻撃にも積極的に参加。終了間際にはペナルティーエリアの外に出たGKをカバーしてゴール前でシュートをクリア。落ち着いたプレーが光った。
増田は後半15分から出場。こう着状態の戦況を変えたい指揮官の最初の選択肢として投入された。前線から果敢にプレスを掛け、相手守備の裏へ素早く飛び出してはチャンスメークと走り回った。決定的な場面は同40分。水野晃樹(千葉)がドリブル突破からシュート。左ポストに当たったこぼれ球に増田が詰めたが、GKにクリアされた。
攻守に存在感を示した2人。増田は「勝てる試合だった。あのチャンスは決めないといけない。明日からの練習で自信を取り戻さなくては」と語り、伊野波は「あと一週間ある。(問題点は)修正できる。コミュニケーションをしっかり取り、意識を変えないと」。反省の言葉の中に、本番への強い闘志をにじませた。
【写真】 増田 誓志(ますだ・ちかし) 1985年6月19日生。179センチ、75キロ。広い視野と、巧みなボールコントロールで攻撃のリズムをつくるMF。ミドルシュートも強力。高校3年時に全国総体と全日本ユース8強、全国選手権優秀選手。J1通算50試合4得点。(右)
【写真】 伊野波雅彦(いのは・まさひこ) 1985年8月28日生。179センチ、73キロ。右足からの正確なキックと豊富な運動量、一対一の強さが持ち味のDF。阪南大では1年時からレギュラー。2年時にはユニバーシアード・イズミル大会で日本の3連覇に貢献。J1通算28試合1得点。(左)