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新国立競技場完成

2019年12月4日
◆収益上げる活用考えたい◆

 来年の五輪とパラリンピックの象徴的な競技会場となる新しい国立競技場が完成した。

 神宮外苑の緑との調和を目指し、大屋根と3層のひさしには県産スギやカラマツの国産木材が使われている。縦格子のスギのひさしが大きな曲線を描きながら広がり、日本の伝統的な建造物の美しさを感じさせる。

 設計を担った建築家の隈研吾さんは木材を前面に押し出した理由について「木が都市に増えたら、子どもたちの気持ちも優しくなるかもしれないと思った」と語る。

 整備費は設定されていた上限を下回り、1569億円。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は胸をなで下ろしていることだろう。

 というのも、当初案はあまりにも巨大で、3千億円近い整備費となる試算が出て、政府が4年前に白紙撤回した経緯があるからだ。高さを抑え、周囲の景観になじむ、ほどよい大きさのスタジアムを一から練り直し、3年のうちに完成させることができるのかとの懸念があった。

 6万人を収容するスタンドは全ての階に車いす席を整え、五輪では約500席、パラリンピックでは750席近くを用意する。障害者に優しい空間づくりは当たり前になった。

 気になるのは大会後の競技場の利用方法だ。当初の計画は陸上のトラック部分を取り除き、全面を芝で覆ってサッカーとラグビーの試合で使っていく構想だった。世界選手権など大規模な陸上大会は、国際基準を満たす練習用トラックがないため開催できないとされ、球技専用のスタジアムとして利用する方が合理的だと考えられた。

 しかし、サッカーのワールドカップ(W杯)予選や、ラグビーの日本代表戦はそうそう開催できるものではない。まして、6万人の大観衆が詰めかける試合はめったにない。

 陸上のトラックを残し、日ごろからジョギング愛好者らに開放すれば、身近な「五輪の遺産」になる。国立競技場が東京体育館と結ばれたことで、体育館隣の1周200メートルのトラックを活用しやすくなる。これを使えば、世界選手権は無理でも、一定の国際陸上大会を招致できるとの見方も広がってきた。

 施設の後利用は何より経済性が重要だ。負の遺産にしてはならない。国立競技場は今後、年間24億円の維持費が見込まれる。それを賄い、収益を上げるには、ライブコンサートなど音楽イベントの開催が最も効果的といわれる。五輪の永遠のシンボルとなる施設だから、その場に立ってみたいと願う市民は多いだろう。スポーツであれ音楽であれ、市民に喜ばれるイベントを最優先に考えてはどうか。

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