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8050問題

2019年11月27日
◆引きこもりSOS受け皿を◆

 就職氷河期や非正規化など不安定な雇用を背景に、顕在化したのが引きこもり問題だった。新卒一括採用の慣行にはじき出されたり、過酷な労働に不調を来したりした当時の若者たちが社会との距離を置き始め、それ以来、引きこもり状態が続く人もいる。いまや当事者は40~50代、親世代は70~80代と高齢になった。長期化と高齢化に伴って生じる困窮は「8050問題」と呼ばれ、経済、生活、体力面などあらゆる問題が起きる。支援が必要な家族への対応を考えるときだ。

 県が初めて行った調査で、引きこもり状態にある人は15~65歳の601人と推定された。民生・児童委員が答える形式だったためこれを上回る可能性は十分ある。期間は「10年以上」が最多で28・6%、次いで「5年以上10年未満」が11・8%。国と同様、本県でも長期化と高齢化が明らかになった。

 世間から隔絶した人がそれぞれに描く自立の形は多様で、社会復帰を後押しする支援体制はまだ不十分だ。地域の実態を詳細に把握すること、家庭訪問を含め相談に応じる人員を手当てすることなど拡充に本腰を入れる必要がある。

 教育や福祉、雇用の関係者が年1回集まる県ひきこもり対策連絡会議が今月、県庁であり、調査結果が報告された。多機関連携の重要性を確認した一方で指摘されたのは、学齢期を過ぎた当事者への対応の難しさだ。「学校卒業後、どこにも属さず引きこもっている人のSOSは発掘しにくい。『困っている』という声が聞こえてこなければ、行政の支援は届かない」などの意見が交わされた。

 当事者の中には、何度かSOSを出したにもかかわらず気づいてもらえず、「助けて」と発信することを諦めた人も多いだろう。そうした彼らにどうアプローチしていいか分からない―という悩みは、支援者や地域住民に共通するものだ。

 京都市を拠点に支援する山田孝明さんは今月、引きこもりの親の会「県楠の会」の例会で講演し、「行政の制度は行政がしたい支援であり、結果的に就労支援に重点が置かれている。彼らが求めているのは、いつ行っても安心して話を聞いてくれる所。当事者目線の支援が重要だ」と投げ掛けた。

 当事者が社会から「見捨てられていない」という希望を持てるよう、人との関係性を築ける受け皿が求められている。それは場所を設置するだけに終わらない。支援者だけに任せて済むものでもない。当事者と家族への理解を深め、地域で見守る関係づくりが大切だ。地域でひっそりと暮らしている彼らの存在を忘れてはならない。

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