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安倍首相 在職史上最長へ

2019年11月19日
◆品格のある政治の体現を◆

 安倍晋三首相の通算在職日数がきょう、2886日に達し、戦前の桂太郎と並び、憲政史上最長となった。政権を奪還した2012年衆院選から国政選挙に6連勝。圧倒的な議席数を背景に、1強多弱体制を構築したのが最大の特徴だろう。

 ただ、政策が評価されたというよりも首相を脅かす存在がいなかった。野党は、旧民主党政権の失態のイメージを払拭(ふっしょく)できないまま衆参両院選挙に連戦連敗。自民党内もライバル不在だ。50%前後で推移する高い内閣支持率も、支持理由の「ほかに適当な人がいない」が49・6%(10月26、27日の共同通信電話世論調査)と他を引き離すのが、政権の実像を表す。

 アベノミクスによって経済指標は好転し、経済の失速感は克服した。ただ、恩恵は国民に届いたとは言えず、最近では金融緩和の副作用も顕在化しつつある。間もなく7年を迎える長期政権で喪失したものは多い。政治から緊張感が消え、異論に真正面から向き合おうとしない首相の政治手法も相まって、行政監視機能を持つ国会は、明らかに機能不全だ。

 その象徴は、安全保障法制、特定秘密保護法、いわゆる「共謀罪」法などへの対応。国論を二分するテーマでありながら、疑問点に真摯(しんし)に答えることなく、最後は数の力で強行突破だ。こうした状況に、官僚機構も敏感に反応する。人事権も握る首相官邸主導が確立した結果、霞が関には政権の意向を必要以上にくむ忖度(そんたく)の空気がはびこっている。

 モラルの低下も招いた。森友学園問題では、財務省で民主主義の基盤を揺るがす決裁文書の改ざん・破棄が発覚したが、組織の責任者の麻生太郎副総理兼財務相は依然職にとどまっている。加計学園問題も、納得できる説明をしたとは言い難い。

 「地球儀俯瞰(ふかん)外交」も曲がり角を迎える。トランプ米大統領との関係を基に、表向き強固な日米同盟を築く一方で、意欲を示すロシアとの北方領土交渉は停滞、日韓関係は最悪の事態に直面する。対北朝鮮外交でも、存在感は希薄だ。

 政府の隠蔽(いんぺい)体質を排し、政策を含む過去の政権運営を検証する。国会の論戦から逃げずに、十分に説明責任を果たす。そして、悲願の憲法改正にまい進する前に、国民が望む政策の優先順位を見極め、為政者として幅広い合意の形成に努力していく。権威ある者は謙虚さを忘れず、権力は抑制的に使うことが品格ある政治だろう。

 自民党総裁の任期は2年を切った。政権のレガシー(政治的遺産)づくりにはやるのではなく、最長記録にふさわしい「王道」を歩んでほしい。

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