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大嘗祭

2019年11月16日
◆議論し国民の理解を広めよ◆

 天皇陛下は皇位継承に伴う一世に一度の重要祭祀(さいし)とされる「大嘗祭(だいじょうさい)」に臨まれた。中心儀式「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」では、皇居・東御苑に設営された祭場の大嘗宮で、皇祖神の天照大神(あまてらすおおみかみ)や全ての神々に新穀を供え、自らも口にするなどして国家・国民の安寧と五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。

 天皇家の私的な祭祀で、神道形式で営まれる。7世紀後半に始まり、簡素な祭祀だったといわれるが、天皇の神格化を進めた明治政府が儀式の段取りを「登極令(とうきょくれい)」に定め、大々的に挙行されるようになった。

 戦後、天皇は「象徴」となり、政教分離が規定された。登極令も廃止されたが、政府は平成の代替わりの時も、今回も登極令に合った形式を踏襲。このためだけに社殿など大小30余りの建物から成る大嘗宮を建てた。儀式終了後に取り壊される。祝宴もあり、大嘗祭には27億円の国費が支出された。

 政教分離に反するとの批判は尽きない。古来の伝統を今の時代にどのように調和させ、受け継いでいくか。政府は丁寧に議論し、国民の間に理解を広げていく努力を怠ってはならない。

 大嘗宮の儀は古来変わらぬ所作で執り行われるとされるが、そのほとんどは非公開。宗教色が強いため、政府は平成の代替わりに際し、国事行為として行うのは困難だが、憲法が定める皇位の世襲という公的性格があるとの見解をまとめ、国費の支出を決定した。今回は早々に前例踏襲を決め、議論らしい議論はなかった。

 そんな中、皇嗣(こうし)の秋篠宮さまが昨秋の記者会見で、大嘗祭について「宗教色が強く、国費で賄うべきではない」と述べられた。政府が決めたように皇室の公的活動費「宮廷費」ではなく、私的経費「内廷費」から費用を出し「身の丈に合った儀式」を求めた。政教分離を念頭に置いた発言とみられる。

 大嘗宮を建てず、宮中にある神殿を使うことも提案したが、宮内庁は聞く耳を持たなかったという。祝賀ムードの中で議論が深まることはなかった。

 政府にとって前例踏襲が最も無難だろう。ただ平成の即位の礼と大嘗祭を巡り市民らが違憲確認などを求めた訴訟で1995年3月、大阪高裁判決は大嘗祭について「国家神道に対する助長、促進になるような行為として、政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概には否定できない」と判断した。

 この判決は確定しているが、政府関係者は「最高裁の判断ではない」と取り合おうとしない。しかし象徴天皇制が国民の理解と支持の上に成り立つことを考えれば、疑問や批判を置き去りにせず、真摯(しんし)に向き合う必要がある。

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