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高校生の地元就職

2019年11月12日
◆新たな人材需要に対応せよ◆

 県内高校生の就職活動が大詰めの段階を迎えている。売り手市場を受け、企業は優秀な人材を確保しようと就活が早期化し、近年は12月末で9割超が内定。さらに採用意欲を高めている都市部の大手企業が待遇面を改善させており、人材の県外流出に危機感が募る。若者が安心して働き、意欲や能力を発揮できる環境づくりが急務だ。

 10月下旬、宮崎地区電気工事業協同組合青年部が宮崎工業高を訪れ、実習を通して仕事の技や魅力を生徒たちに伝えた。同校によると、ここ数年、各業界からの実習依頼が格段に増えたという。地元企業の人材確保への熱と必要性が高まっている証左だろう。

 本県は長年、都市部への人材供給県となってきた。50年間、高校新卒者の県内就職率は全国40位台で推移し、2014、15年度卒業者は54%、54・8%で2年連続で全国最低だった。

 これを打破するため、県は就職説明会や企業ガイダンス開催を充実。企業と高校を橋渡しするコーディネーターも増配した。同校ではこれらの事業を活用し、高校1年時から地元企業を知る機会を持ったことで、30%台だった県内就職率が19年3月卒業者は44%に上昇するなど、成果が出始めた。

 これまで以上に、県内企業の雇用環境を底上げし、魅力を周知する取り組みが欠かせない。「外に出て挑戦したい」という若者の意欲を制限するものであってはならないが、選択肢を広げる意味でも重要だ。同時に、就職後の定着を図る努力も求められる。本県の早期離職率は全国平均より高く、企業の人材育成力を高める必要がある。

 近年の動向として「高校新卒者に求められる能力が高度化している」と指摘するのは、宮崎商業高進路指導部の長濱信幸教諭だ。大卒者が都市部の大手企業を志向し始め、これまでの大卒者向け求人が高卒者に振り向けられるケースが増えてきた。好待遇と引き換えに、高い学力やコミュニケーション力などが要求されるという。

 長濱教諭は「生徒が主体的に、進路や人生のデザインについて考えを深めていくことが一層必要になってくる。さまざまな体験と会話を積み重ね、自己と対話する力を高めて」と話す。人手不足や人工知能(AI)の導入を見据え、新しい人材需要に対応するための模索は教育現場で始まりつつある。

 ゴールは「全国最低水準」からの脱却ではない。新しい産業構造への転換を含め、若者を引きつける雇用環境創出をどう進めるかが肝要になる。

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