ホーム 社説

重度障害者の国会質問

2019年11月9日
◆健常者中心の社会を問う◆

 重い障害で車いすと介助者が必要な木村英子、舩後靖彦両参院議員(れいわ新選組)が、7月の参院選での初当選後初めて国会質問に臨んだ。

 特に舩後氏は体がほぼ動かず声も出せない。車いすの国会議員の前例はあるが、2人のように24時間介護を要する重度障害者が国民の代表として国会に進出し、議員活動を本格化させたのは画期的だ。「障害があっても当たり前に暮らせる社会に」という彼ら当事者の声をしっかり受け止め、社会全体で各種バリアーの解消を急ぐべきだ。

 脳性まひの木村氏は5日の参院国土交通委員会で、秘書らに介助されながら「障害者は災害時に特に困難を強いられる。避難所へ行っても車いすトイレがない。知的障害者の親は避難所へ行くのを諦めてしまう」と切実な現状を訴えた。

 赤羽一嘉国交相は「貴重な意見をありがとうございます。バリアフリーが当たり前の世の中をつくる視点に立つ」と丁寧に答弁し、議員らも終了時に拍手で応えた。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の舩後氏も7日の参院文教科学委で、事前に用意した原稿をパソコン音声や介助者の代読の形で質問。「障害がある人、ない人で分け隔てのない社会をつくってほしい」とインクルーシブ教育の必要性を訴えた。準備のため質問が止まることもあったが、出席議員たちはじっと見守った。

 いずれも、委員会がある種の緊張感に包まれ、各議員たちも国民に選ばれて国会審議に参加していることの重みを再認識したのではないか。その点でも2人は国会に重要で前向きなインパクトをもたらしたと言える。

 参院は2人の当選を受け、大型車いすが使えるよう本会議場の議席を改修、押しボタン式投票装置も設置して介助者が代理で押すのを容認した。車いすのまま乗降できる福祉車両導入も決めた。裏を返せば、重度障害者が活動する想定がそもそも国会になかったということだ。

 障害者差別解消法は、障害を理由とした不当な差別を禁止した上で、障害者への「合理的配慮」を国や自治体などに義務づけている。声が出せない舩後氏が委員会中に質問内容を介助者に伝えるのに要する時間を、与えられた質問時間から除外するか否かは委員長判断となり、舩後氏側が求める「合理的配慮」はなお試行錯誤が続きそうだ。

 2人が示した課題は、国会だけの問題ではない。健常者中心で回ってきた日本社会の在り方自体が問われている。知的、精神障害も含め障害者は計1千万人近い。彼らの声を代表した2人の訴えには社会全体が真剣に向き合う必要がある。

このほかの記事

過去の記事(月別)