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目黒虐待死判決

2019年9月19日
◆早急に安全網の立て直しを◆

 東京都目黒区で昨年3月、5歳女児を元夫とともに虐待し、死亡させたとして保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親の裁判員裁判で、東京地裁は懲役8年の判決を言い渡した。女児は元夫に繰り返し暴行されたが、母親は放置。十分な食事を与えず、衰弱しても発覚を恐れ病院に連れて行かなかったとされる。

 事件をきっかけに政府は、通告から48時間以内に子どもの安全を確認できない場合、児童相談所が立ち入り調査を行うとするルールを決定。児相が子どもを親から引き離し一時保護する「介入」強化も打ち出した。

 しかし、その後も今年1月に千葉県野田市の小学4年女児、6月に札幌市の2歳女児と虐待死は後を絶たず、8月には鹿児島県出水市で4歳女児が亡くなり、警察は虐待の疑いがあるとみて捜査している。一連の事件では、介入と保護者支援という役割を併せ持つ児相が支援の方を重視するあまり、介入に踏み切れない傾向が見て取れる。

 さらに児相と警察、自治体との間で情報共有と連携が十分になされず、対応の経緯を巡る説明に食い違いも出ている。なぜ救えなかったのか。幼い命が失われるたびに繰り返される問いに向き合い、安全網の立て直しを急がなければならない。

 目黒区で亡くなったのは船戸結愛(ゆあ)ちゃん。ノートに「もうおねがい ゆるして」などと書き残していた。裁判で母親の優里被告は起訴内容を認め、元夫の報復が怖くて警察に通報できなかったと説明した。

 地裁判決は「重篤な状態に陥っているのを認識しても、医療措置を受けさせなかった不保護の態様は強い非難に値する」と指摘。元夫の心理的DVについては「乗り越える契機があったというべきで、責任を大幅に減じるほどの事情とみることはできない」とした。

 厚生労働省の検証結果によると、一家が昨年1月まで住んでいた香川県の児相は結愛ちゃんを2度も一時保護しながら施設入所を申し立てず、東京都の児相には詳しい虐待情報を引き継がなかった。都の児相は緊急性が高いケースと判断せず、保護者との関係構築を優先。優里被告に結愛ちゃんとの面会を拒まれ、本人の安全を確認できないうちに事件が起きた。

 保護者との関係構築を考えて介入をちゅうちょすることがないよう、来年4月から施行される改正児童虐待防止法は、介入と保護者支援を担当する職員を分けると定める。ただ同じ児相内で担当職員や部署を分けても、どこまで実効性があるかは不透明だ。児相はリスク判断と介入に特化し、市町村が支援を引き受けるという案もあり、さらに検討を重ねる必要がある。





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