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概算要求最大

2019年9月7日
◆拡大路線で財政再建可能か◆

 2020年度予算編成の概算要求は、各省庁からの一般会計での要求が105兆円規模に膨らみ、2年連続で過去最大を更新した。社会保障費と防衛費が最高額を塗り替え、災害対策費も全体を押し上げた。

 財務省が年末にかけて要求を査定し、削り込んでいくが、消費税増税に伴う景気対策や教育無償化などの経費が別枠で上積みされるため、20年度予算案は、19年度の101兆4千億円を上回る可能性が高い。

 これに加え、安倍晋三首相は景気下押し懸念への対応として「リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と強調しており、財政は拡大の一途をたどる流れになっていると言わざるを得ない。

 これが、先進国で最悪の財政状況に陥っている国の財政運営なのだろうか。国と地方の長期債務残高は19年度末に国内総生産(GDP)の約2倍に相当する1122兆円に上る見込みで、22年度には団塊の世代が75歳以上になり始め、社会保障費が急増する。

 財政再建への道筋をつけ、持続可能な財政制度を構築しなければならないのに、目の前の事象にとらわれすぎているように見える。10%以降、消費税増税をどうするのかという問題も含め、ここ数年間が正念場だ。視野を広げ責任ある政策運営に取り組まなければならない。

 バブル崩壊後の不景気で就職機会に恵まれなかった「就職氷河期世代」への支援にも注目したい。現在、30代半ばから40代半ばになるこの世代は大学や高校を卒業した直後に就職できず、非正規などで働いてきた。引きこもりの状況にある人もいる。この世代の正規雇用を増やすことは喫緊の課題だ。

 氷河期世代もいずれ高齢者になる。その前に安定した社会生活を送れるようにすることは、社会保障費の抑制にもつながる。20年度は関連の各府省が計1344億円を要求した。実効ある制度設計にしたい。

 一方で、消費税増税に伴う景気対策は過剰ではないか。19年度に2798億円を計上したキャッシュレス決済のポイント還元制度は20年度も1千億円を追加する。安倍首相は、増税で景気が急激に落ち込んだ14年度の二の舞いは避けたいとの思いが強いのだろう。

 適切な規模について政権中枢に意見するのは本来、財務省の役目だが、同省が動いた形跡はない。政治との関係の中で、増税を実現するために一定の財政拡大を容認する戦略なのかもしれないが、市場は日本の財政運営能力に疑問を深めている。こうした手法がいつまでも通用するわけではない。

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