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本県の最低賃金

2019年9月6日
◆雇用環境改善にも努めたい◆

 2019年度の本県の地域別最低賃金が現在の762円から28円引き上げられ、時給790円になった。来月から適用される。時給で示す現方式になった02年度以降、最大の引き上げ幅と最高額だが、東京と神奈川は初めて千円を超え、全国平均の時給は901円。最高額の東京1013円など都市部との開きは依然大きいままだ。

 最低賃金は正社員やパート、アルバイトら全ての労働者に適用される賃金の下限額を示す。特に非正規で働く人への影響が大きく、宮崎労働局によると、従業員数100人未満の製造業や30人未満のサービス業など小規模事業所で働くとみられる約15万人のうち、今回の改定額の対象者は2万5200人(16%)になる見込みという。

 最低賃金や同額程度で働く人はこれまで、家計を補完する既婚女性のパートタイマーや若者が多いとみられていた。しかし、離婚率や未婚率が高くなり、非正規で働きながら家計を支える人が急増。働いても生活が豊かにならないワーキングプア(働く貧困層)が社会問題化したことで、最低賃金制度はセーフティーネットとしての役割に期待が高まってきた。

 しかし、時給790円に引き上げられた場合でも生活の厳しさに変わりはないだろう。1日8時間、1カ月に22日働いて月収入は14万円弱。ここから社会保険料や税金などを差し引き手元に残る額では、家計を維持するのに十分とは言いがたい。

 本来は働く人々の生活を安定させるための制度だが、全国最低レベルにある本県ではその機能が十分に果たせていないのではないか。中央最低賃金審議会や各都道府県の地方審議会の議論では、引き上げ額の「目安」に目がいきがちだ。しかし、労働者の生活を保障する観点から研究や議論をもっと深める必要がある。不安定な立場である非正規雇用者の労働環境の改善にも力を尽くすべきだ。

 賃金の底上げは個人消費に直結し、経済政策としても重要性を持つ。将来的に、最低賃金の着実な引き上げを図るためにも、人件費増の負担に悲鳴を上げる中小企業への配慮も忘れてはならない。中小企業の経営基盤を後押しする政策が同時に必要になるだろう。

 解消の必要性が叫ばれてきた地域間格差は、拡大傾向にある。02年度は最高額の東京と本県の差は103円だったが、19年度は223円に広がった。雇用の場と高い賃金が魅力的な都市部へ若者を中心とした労働力が集中しており、これらが結果的に人口流出を招いている。これ以上の格差が生まれないよう、是正へ具体的な検討を始めなければならない。

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