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フリーランス保護

2019年9月4日
◆多様な働き方に環境整備を◆

 企業や団体に属さず仕事ごとに契約を結び、自分の専門知識や技術を提供して対価を得る「フリーランス」として働く人は306万~341万人に上るとの試算を内閣府がまとめた。就業者全体約6600万人の5%程度で、この中にはサラリーマンや主婦など副業としてフリーランスで仕事をする人が100万人規模でいるとみられる。

 自宅など事業所以外の場所でパソコンや携帯を使って勤務するテレワークが広がり、副業・兼業を解禁する企業も相次いでいる。女性や高齢者が働きやすい環境整備を目指す動きもあり、多様で柔軟な働き方の一つとして増えていくだろう。

 ただ働く場所や時間に縛られず、自由度が高いという人がいる一方で、取引先による理不尽な扱いを訴える人も多い。口約束で仕事を請け負い、一方的に契約を破棄されたり、報酬を減らされたりする。パワハラやセクハラにもさらされる。

 フリーランスはIT技術者や翻訳家、デザイナーから芸能人、スポーツ選手まで多岐にわたるが、その詳細な実態は分かっていない。労働市場の活性化に向け政府は実態把握を急ぎ、業界ごとの事情に応じて法整備も含め、きめ細かい支援を重ねていく必要がある。

 大阪の吉本興業に所属するタレントの「闇営業」に端を発した一連の騒動の中で、フリーランス全体に共通するさまざまな問題点が浮き彫りになった。事務所の力が圧倒的に強く、業界の慣行により多くのタレントが契約書もなしに仕事を割り振られ、一方的な契約解除や低い報酬に甘んじている。

 公正取引委員会は先日、芸能人の契約について事務所が一方的に著しく低い報酬で取引を強要したり、独立・移籍した芸能人の活動を前の事務所が妨害したりするのは独禁法上問題となり得るとの見解を示した。実際に同法違反となるかは不利益の程度などにより個別具体的に判断されるが、強い立場を利用して不利益を強いるのは「優越的地位の乱用」に当たる可能性があると指摘している。

 公取委は芸能界への監視を強めており、先月にはジャニーズ事務所に対し、テレビ局などに独立した「SMAP」の元メンバーらを出演させないよう圧力をかけた疑いがあるとして注意した。

 企業と雇用関係にないため、労働者を守る法令は十分に及ばない。最低賃金は適用されず、産休や育児休業、けがや病気による休業中の補償もない。パワハラなどの防止を企業に義務付けた法律の対象にもならない。フリーランスの活躍を阻む壁は多々あり、相談窓口の整備も課題だろう。

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