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日韓軍事情報協定破棄

2019年8月24日
◆首脳レベルで打開の道探れ◆

 韓国政府は24日に更新の判断期限が迫っていた日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)を破棄することを決めたと発表した。日本政府による韓国向けの輸出規制強化を元徴用工問題の報復ととらえ、対抗措置として決めたものだ。だが、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を続ける中で、協定の破棄は朝鮮半島情勢を巡る日韓の連携に重大な影響を及ぼすことになる。

 日韓の関係悪化は、通商分野から安全保障分野にまで拡大した。その影響は日韓2国間だけにとどまらない。日米韓3カ国の連携の基盤を揺るがし、北東アジア地域の安全保障に深刻な打撃となる恐れがある。韓国政府には事態を冷静に見極め、再考するよう求めたい。

 河野太郎外相と康京和(カンギョンファ)韓国外相は21日の会談で、元徴用工問題の解決に向け外交当局間で意思疎通を続ける方針を確認。だが、互いの国民世論を背景にした関係悪化を収めるのは、事務レベルの協議では難しい。

 GSOMIAは互いに軍事上の機密情報を提供し合う際に、第三国への漏えいを防ぐために結ぶ協定で、日韓間では2016年11月に締結された。それまで米国を経由して行われてきた北朝鮮の核・ミサイルに関する機密情報が、協定によって「日韓政府間で円滑、迅速な情報交換が行われる」と日本の防衛白書は評価している。

 ただ、協定は1年ごとの更新で、90日前に終了の意思をどちらかが伝えれば破棄される仕組みとなっていた。

 韓国政府は破棄の理由について、日本の輸出規制強化が「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」と指摘、協定の継続が「韓国の国益にそぐわない」としている。だが、その判断は早計ではないか。

 北朝鮮が最近、発射を繰り返しているのは新型の弾道ミサイルとみられている。それだけに日米韓での緊密な情報交換と連携が必要なはずだ。

 元徴用工訴訟から始まった日韓関係の悪化は、さまざまな分野で影響が出始めている。韓国では日本製品の不買運動が広がり、韓国からの7月の訪日旅行者数は前年同月比7・6%減と大幅に落ち込んだ。日本の観光地には厳しい状況に直面しているところもある。民間の交流にも中止の動きが出ている。

 両国政府は互いに相手側にボールがあるとの姿勢だ。日本側は元徴用工問題での対応を求め、韓国は輸出規制強化が報復措置だとして撤回を要求する。だが相手に責任を押し付けるだけでは、負の連鎖は断ち切れない。これ以上、混迷を深めないために、首脳レベルで対話の道を探り、事態の打開を図るべきではないか。

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