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地球の気候変動

2019年8月17日
◆政府は政策転換の覚悟示せ◆

 今夏も温暖化に起因するとみられる気象災害が相次ぎ、エネルギー政策を転換する重要度が増している。2015年に採択された地球温暖化防止のための国際枠組みであるパリ協定も来年、本格的に動きだす。石炭や天然ガスなどの化石燃料依存から一刻も早く脱却し、持続可能なエネルギー需給を実現することが、社会の将来を左右するテーマだ。

 環境省が7月公開した新作動画「2100年 未来の天気予報」では、温暖化対策が不十分な場合の将来の姿を紹介。同年の8月下旬を想定した動画では「ほぼ全国で40度を超えた」と報告し、熱中症などによる死者は全国で1万5千人超を記録。猛烈な台風や異常豪雨が発生するとしている。

 気候変動に対して、私たちは具体的な行動をとる責任がある。洪水の深刻化、干ばつによる食糧や水資源の不足、海面上昇や氷河の消失、生態系の異常など地球規模で頻発している現象は、地球が人類に示すイエローカードといっていい。

 このままの経済活動が続けば、世界の平均気温は100年後に4度前後の上昇が予測される。パリ協定は、産業革命前に比べ「1・5度に抑える努力をする」と目標を掲げる。2度の気温上昇でも地球の生態系や社会に大きな悪影響が生じることが科学者によって示されているが、2度抑制は達成困難でも、可能な限り1・5度を目指そうというのが世界の基調だ。

 パリ協定に基づいて政府がまとめた長期戦略は、1・5度を目指す世界の努力への貢献をうたい、脱炭素社会を「今世紀後半のできるだけ早期に」実現することを目指すとしている。従来の姿勢から一歩踏み込んだ点は評価できるが、多くの問題を含んでいる。

 天然ガスなどに比べて二酸化炭素(CO2)発生量が極めて多い石炭火力の廃絶は、脱炭素社会に向けた最初の一歩となるものだ。しかし、戦略案の基になった有識者懇談会の報告書策定過程で、座長が示した「石炭火力の全廃」との記述に、経団連など産業界の代表が強く反対し、結果的に「依存度を下げる」と後退した表現になった。政府案もこれを踏襲。思い切った政策転換を進めることに及び腰な姿勢を示しているとみられても仕方ない。

 世界では今、再生可能エネルギーの拡大を中心にしたエネルギー政策の大転換が進む。それらは各国の産業の国際競争力や安全保障をも左右する重要な政策課題である。政府の「脱炭素社会」を実現するための内容は、世界が求める水準には達していない。一刻も早く政策転換の覚悟を示すときだ。

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