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為替操作国認定

2019年8月9日
◆経済安定のため歩み寄りを◆

 米政権が対中制裁関税第4弾の発動表明に続き、中国を「為替操作国」に認定し、世界の金融市場に動揺が広がっている。米中対立が新たな次元に入ったことで、世界経済は大きな打撃を受ける恐れがある。米中両国は世界経済への影響をよく考え、冷静さを取り戻すべきだ。

 米財務省は、人民元を安値に誘導しているとして、中国を1994年以来25年ぶりに為替操作国に認定した。トランプ大統領が制裁関税の第4弾を9月1日に発動する方針を公表したばかりだ。中国に対する圧力を強化するとともに、人民元安を防止し、中国からの輸入品に課す追加関税の効果を保つ狙いがあるとみられる。

 中国商務省も米国の追加関税に対抗し、中国企業が米農産品の新規購入を停止したと発表した。米中貿易協議が進展しないことにいら立つ米国が新たな制裁を打ち出し、中国が報復で応じるという制裁と報復の連鎖が続いている。

 米中貿易摩擦の出口が見通せなくなったことで、世界の金融市場は大荒れとなった。5日のニューヨーク市場の株価は今年最大の下げ幅を記録した。6日の東京市場では株価が一時、600円超急落し、円高が急速に進行した。金融市場の混乱は経済の不安定化を招き、世界景気の下押し要因となる。憂慮すべき事態である。

 中国の為替政策に不透明だとの指摘があるのは事実である。中国は知的財産権の侵害や国有企業への過剰な補助金、技術移転の強要など不公正な経済慣行の改善と併せ、為替政策の透明性の向上に努める必要がある。

 だが、米財務省が半期に1度の外国為替報告書では中国を「監視対象」に指定するにとどめ、慎重な姿勢を保ってきたことを考えれば、今回の為替操作国認定はいかにも唐突だ。

 中国の為替政策が、元安誘導はおろか元安容認に転換したとの確証すらない。米政府は認定の根拠を明確に説明することが求められる。

 米中は9月にワシントンで閣僚級の貿易協議を開催する予定だ。両国は二大経済大国として世界経済の安定を支える責任がある。貿易不均衡とハイテク覇権争いから始まった米中貿易摩擦は通貨政策に及び、未知の領域に突入した。この摩擦を一日も早く終わらせるために、歩み寄りの余地を探ってほしい。

 米国は5月末に発表した外国為替報告書で、日本を「監視対象」に指定し、円安をけん制している。日銀は必要なら追加緩和を実施する姿勢だが、米側が円安誘導政策として批判してくる可能性がある。政府はそうした事態を想定して対処方針を固めておくべきだ。

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