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憲法改正論議

2019年7月17日
◆必要性と妥当性見極めたい◆

 参院選は今後の憲法改正論議の行方を左右する、極めて重要な岐路となるだろう。2020年までの改正憲法の施行を目指すと表明している安倍晋三首相は、「改憲を議論する政党を選ぶか、審議を全くしない政党を選ぶかを決める選挙だ」と主張。自民党は9条への自衛隊明記など4項目の改憲案を公約に掲げた。

 今回の選挙で、憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持すれば、首相は改憲論議促進の訴えが支持されたとして早期の国会発議を目指す考えだろう。

自公でも見解に相違

 ただ、改憲を急ぐよう求める声が今、国民の間にあるだろうか。世論調査では、参院選で重視するのは社会保障や経済政策であり、憲法の優先順位は低い。問われるべきなのは、国の在り方の根幹を定める憲法のどこを、なぜ、どう変えるのか。その必要性が今あるのか、という具体的な中身だ。

 自民、公明党、日本維新の会などの「改憲勢力」が今参院選で3分の2以上の議席を維持するには、自民は大勝した6年前の参院選並みの議席獲得が必要となる。

 首相は日本記者クラブの党首討論会で「国民民主党の中にも改憲に前向きな方々がいる」と言及した。3分の2に届かなかった場合、野党議員にも呼び掛けて多数派の形成を目指すことも予想される。選挙後の連携の動きを見定めるためにも、個々の候補者の主張を精査する必要があろう。

 一方で、改憲勢力の間でも具体的な改憲案で見解が一致しているわけではない。首相は9条への明記で「自衛隊違憲論争」に終止符を打つと主張する。だが、公明は公約で「多くの国民は自衛隊を違憲の存在とは考えていない」と指摘、「慎重に議論されるべきだ」としている。9条明記で自衛隊の任務や権限は変わらないのか。丁寧で精緻な議論が必要だ。

解散権制約も課題に

 共産、社民両党は「憲法を生かす政治」を主張し、改憲に反対。一方、立憲民主党や国民は具体的な改憲項目を提示する。一つは解散権の制約だ。首相に自由な衆院解散権を認める憲法解釈の下、先の通常国会でも解散の観測に振り回され、まともな審議が行われなかった。国会の機能再生のためにも検討すべき課題ではないか。

 立民は「知る権利の尊重」を、国民はさらに「地方自治の保障」などの改憲テーマを公約に掲げる。どの党の改憲提案に必要性と妥当性があるのかを見極めたい。

 首相は先の通常国会での憲法審査会が極めて短時間しか開かれなかったとして、野党の姿勢を批判した。だが、野党も審議を拒否しているのではなく、国民投票でのCM規制の議論を優先するよう主張し、調整が付かなかったのが実態だ。改憲手続きを定める国民投票法の問題点への対処は、改憲論議の前提である。建設的な議論を求めたい。

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