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ハラスメント禁止条約

2019年7月9日
◆批准に向け具体的な検討を◆

 職場でのあらゆる暴力とハラスメントを全面禁止する条約が国際労働機関(ILO)の総会で採択された。ハラスメントを巡る初の国際基準となり、批准した国は「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす許容できない行為や慣行、その脅威」の禁止を法律で義務付け、民事上の責任や刑事罰などの制裁を設けるよう求められる。ハラスメントを巡る初の国際基準となり、批准した場合は条約に従って国内法の整備が求められる。日本政府は賛成票を投じたが、批准には慎重な見方を示している。

根絶へ大きな追い風

 性被害を告発する「#MeToo」運動が世界的に広がる中、新たな条約は、あらゆるハラスメント被害根絶の大きな追い風となるだろう。

 日本ではILO総会を前に5月、女性活躍・ハラスメント規制法が成立。だが、条約が求めている基準との隔たりが大きいため、日本政府は批准に及び腰だ。政府は企業の自主性に委ねたい考えのようだが、それでは規制の浸透に限界がある。批准に向け、具体的な検討を進めるべきだ。

 ILOを舞台にした条約案を巡る議論は紛糾した。昨年の総会では国際基準の必要性で一致したものの、条約制定を求める労働者側と、拘束力のない勧告にとどめたい使用者側とが対立。「条約を採択すべきだ」とする報告書の採択にとどまり、中身の議論は今年の総会に持ち越された。日本政府は「勧告が望ましい」という立場だった。

 だが今年は一転、条約歓迎を表明。5月の規制強化を国内努力として紹介し、採択では賛成に回った。使用者代表の経団連は投票を棄権した。

中途半端な新規制法

 条約発効は2020年の見通しだが、政府にとって批准のハードルは高い。

 5月に成立した女性活躍・ハラスメント規制法は初めて企業にパワハラの防止を義務付けたほか、セクハラやマタハラも含めハラスメントを「行ってはならない」と定めた。しかし労働者側が求めた禁止規定も、社員に限らず就職活動中の学生や顧客などにまで保護対象を広げることも見送られた。

 理念を示すにとどまり、実効性に疑問の声が上がっている。厚生労働省によると、18年度に仕事が原因でうつ病などの精神疾患となったとする労災申請は1820件で過去最多。うち465件が労災認定され、原因別では「嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」が69件で最も多かった。「セクハラを受けた」も33件を数え、全て女性だった。

 ハラスメントが原因となり、自殺したり、休職や退職に追い込まれたりする例は後を絶たない。その被害の深刻さと、国際水準との隔たりを考えるとき、新たなハラスメント規制法は中途半端というほかないだろう。

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