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改正児童虐待防止法成立

2019年6月22日
◆「絵に描いた餅」では駄目だ◆

 しつけに名を借りた家庭内の体罰を禁止する改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が成立した。相次ぐ児童虐待事件を受けた法改正で、一部を除き来年4月から施行される。親権者が監護や教育に必要な範囲内で子どもを懲戒できると定める民法の懲戒権に関して、政府は施行後2年をめどに見直しを検討する方針を示している。こうした国の動きを絵に描いた餅に終わらせず、児童虐待の根絶という目標に一歩でも近づけたい。

連携ほころびで悲劇

 厚生労働省の通知を受け都道府県などは2008年度から、子どもが重大な被害を受けた虐待事例について検証することになり、本県は09~14年度に県内で起きた死亡事件5例を検証している。

 検証報告書から浮かび上がるのは、現場の対応力と機動力を底上げする必要性だ。14年6月、生後5カ月の男児が餓死した都城市の事件では、未婚の若年出産、母親の不安定な就労、経済的困窮、実家からの支援が不透明であるなど、虐待発生に結びつくリスクが複数あるにもかかわらず、支援体制につながっていない。

 母子保健担当者は要フォローケースと認識していたものの緊急性を認識せず、虐待対応担当者に情報提供していなかった。関係職員の資質向上に加え、訪問の際に直接子どもを目視確認する原則、医療と保健と福祉のネットワーク構築などが課題に挙げられている。

 13年7月に父親から暴行を受けて5歳男児が死亡した宮崎市の事件など他の事例でも、関係機関の連携のほころびが複数重なった結果であることが共通して見えてくる。家庭状況を把握、分析する専門職員の力量も共通して問われることだ。

体罰禁止の土壌必要

 東京都目黒区で5歳女児が亡くなった事件を受け、政府は、児相が虐待通告から48時間以内に子どもの安全を確認できないときは立ち入り調査をするというルールの徹底を通知したが、札幌市で2歳女児が衰弱死した事件では2回目の通告以降、それが守られなかった。5月の面会を警察から事前に知らされても児相は積極的に動こうとせず、結局、最後まで女児の安全を直接確かめなかった。

 道警と児相の主張は食い違っており、一連の経緯を検証する必要がある。だが、関係機関は緊迫感を持って迅速に対応できる組織づくりに尽力すべきだ。人手不足といった組織側の事情は、幼い命が失われる理由には到底ならない。

 今回の改正法により、しつけ名目の体罰禁止が明確に示された。後を絶たない虐待事件報道に心を痛める人が多くいる一方で、体罰を必要悪と容認する風潮が依然として残っていることは残念だ。「きちんと子育てしなくては」という親自身の過度のプレッシャーがそれを強めている向きもあるかもしれない。子育て奮闘中の家族を孤立させず、温かく見守る土壌づくりも必要になるだろう。

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