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老後2千万円問題

2019年6月20日
◆不安解消に年金財政検証を◆

 国会は26日の会期末が迫り、高齢夫婦の老後資金に関する金融庁金融審議会の報告書を巡り攻防が続いている。公的年金だけでは老後の備えとして2千万円不足するとした金融庁報告書が批判を浴び、事実上の撤回に追い込まれた。報告書の説明不足が混乱を招いた面もあるが、制度の持続性や給付水準などに対する国民の潜在的な不安があらためて噴出したとも言えよう。政府は年金の健全性をチェックする「財政検証」を速やかに公表し、実態を明らかにしなければならない。

働いて不足補う実態

 問題になったのは、年金だけでは老後の資金を賄えず、95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要になるとの試算。これが年金に関し「100年安心」としている政府の立場や方針と矛盾するとの疑念が広がった。

 参院決算委員会で、立憲民主党の蓮舫氏が「100年安心」に疑義が生じたと追及。安倍晋三首相は、試算は不正確で誤解を与えたとして、報告書が不適切だったとの考えを示した。その上で、年金については給付を抑制する「マクロ経済スライド」の導入や運用実績を挙げ、信頼性はより強固になったと強調。「現役、将来世代も含め皆さんに安心してもらえる制度になっている」と説明した。

 2千万円は、公的年金を中心とする収入約21万円に対し支出は約26万円で、これによる月5万円の赤字が20年続けば1300万円、30年なら2千万円が不足するとして算出された。

 これはあくまでも一つのモデルであり、年金で全ての支出を賄っている世帯もあるかもしれないが、金融庁が極めてまれなケースをモデルにしたとは思えない。逆に、会社勤めだった人なら退職金からの取り崩しや、定年後も働き続けることで、不足分を補っているのが実態に近いのではないか。

現実味帯びる給付減

 しかし退職金を不足なく確保できる人はどれだけいるだろうか。定年後にさまざまな事情から働けなくなる人もいるはずだ。70、80代になると蓄えも少なくなり、体力的にも働くことが困難になる。

 こうした中で頼りになるのが年金であるのは間違いない。だから国民は保険料を納め続けている。しかし、少子高齢化が進み、給付水準の引き下げも現実味を帯びてきた。国民は年金でどの程度まで賄えるのか不安を高めている。

 「100年安心」が揺らいでいないなら、その根拠を示してほしい。国民の不安を置き去りにしないためにも経済状況や人口、雇用情勢の変化を踏まえて年金財政の健全性をチェックし、給付水準の見通しなどを示す財政検証を早期に公表することが求められる。

 金融庁の報告書は年金や退職金の減少見通しに言及し、資産運用・管理による老後生活への備えの必要性に踏み込んだ。年金制度と補完し合う関係が本来の姿なのだろうが、今回はかなわなかった。

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