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場面緘黙

2019年6月14日
◆話せない不安に支援の手を◆


 自宅ではごく普通に会話できるのに、一歩外に出ると言葉が出なくなる症状は「場面緘黙(かんもく)」と呼ばれる。発達障害者支援法が成立して自閉症スペクトラム障害や学習障害などへの理解は進んだが、一方で同じ支援対象に含まれているにもかかわらず、場面緘黙は依然認知度が低く、支援が届きにくい状況にある。学校などで話したくても話せず、不安な思いをしている子どもたちを早期に発見し、対応につなげるための啓発と体制整備が求められる。


気付かず対応に遅れ


 場面緘黙は2~5歳で発症することが多い。自宅外で一言も話せなかったり、限られた友達とささやくような小声で意思疎通できたり―というふうに子どもの状態は多様だ。知的障害や自閉症スペクトラム障害などに伴う緘黙症状とは区別して考えられる。


 家では普通に話しているため保護者は気付きにくく、逆に学校などでは単におとなしい性格や人見知りだと思われがちで、学校側が困ることはないため見過ごされてしまう。最も発見されにくい障害と言っていいだろう。


 周囲の理解が乏しいことで、「わざと話さないのではないか」と誤解されたり、発表や合唱などの場面で執拗(しつよう)に発話や返事を求められたり、逆に完全に無視されたりして、孤立感や不安が膨張する緘黙児は少なくない。こうした不適切な対応が重なると、青年期に抑うつ傾向や引きこもりなどの二次障害を生じることもある。


 都城市の児童発達支援「花ことば」=写真=代表で、これまで場面緘黙児の支援に携わってきた言語聴覚士の押川亘さんは「大人は明瞭で理論的な会話を教えたい気持ちがあるかもしれないが、それより大切なのは本人の安心と自信を培う関係を築くこと。会話そのものの楽しさや言葉の便利さをたくさん体感できる雰囲気をつくってほしい」と話す。


少ない小児の専門家


 支援の手が届きにくいのは、場面緘黙の特性だけに起因するのではない。本県では、小児を専門に活動する言語聴覚士が圧倒的に少なく約2割にとどまっている。また、発達障害を診断する医療機関は予約待ちが長期化し、児童精神科医も少ないことから、専門的な対応を全く受けないまま大人になるケースも散見されるという。


 発症率は日米などの調査でばらつきがあるものの、0・2~0・7%とされる。約150~500人に1人いる計算だが、支援現場にはその実感は皆無という。


 県言語聴覚士会事務局の山下晃功さん=宮崎市=は「埋もれている支援のニーズに応えるためにも言語聴覚士と学校との連携をもっと深め、理解を促す重要性を痛感している。場面緘黙児を『治療する』視点ではなく、周囲の人たちを巻き込みながら環境調整していくことが必要だ」と話す。一人でも多くの理解者を増やすための取り組みが待たれる。

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