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国会「解散風」

2019年6月7日
◆山積する懸案に本腰入れよ◆

 国会が会期末まで残り3週間を切った。異例の厚遇ぶりばかりが際立ち、肝心の貿易交渉の中身が判然としないトランプ米大統領の来日、ロシアとの北方領土交渉の現状、いまだ核心部分が闇のままの森友、加計両学園問題や統計不正、日本経済の見通し…。審議してもらいたいことは山ほどある。

 ところが、国権の最高機関が十分機能を果たしているとは言い難い。国政全般をテーマに開く衆院予算委員会は、与党が難色を示して3カ月も開かれていない。夏の参院選に合わせた衆参同日選挙、つまり衆院解散の観測が飛び交い、浮足立っているからだ。

首相の発言は不見識

 安倍晋三首相は先日の経団連の総会で、「『風』という言葉には今、永田町も大変敏感だ。一つだけ言えるのは、風は気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」と述べた。ジョークのつもりでも、解散権を持つ首相自らが「解散風」に言及するのは、軽率、不見識と批判されても仕方あるまい。

 まず何よりも首相に説明してもらいたいのは、日米首脳会談だ。トランプ大統領はツイッターや首相との会談などで「7月の選挙までは、交渉の多くのことで取引を待つ」「日本との貿易不均衡は信じられないくらい大きい。貿易交渉で8月に大きな発表ができる」と明かしている。

 農産物の関税撤廃を迫り、自動車の輸入増を「安全保障上の脅威」と位置付ける大統領の発言だけに、選挙前には表に出せないような“密約”が交わされているのではないか、と野党が勘ぐるのも無理がない。貿易交渉は日本経済の行方を左右し、有権者が一票を投じる上での大きな判断材料だ。「日米同盟の揺るぎない絆を鮮明にした」(首相)という自画自賛では済まされない。

政治の貧困さ物語る

 国会前半の論戦の焦点となった厚生労働省の統計不正。政府、与党は、森友、加計問題と同様に逃げ切りを図ろうとしている。「虚偽の説明」を認めながら、「組織的な隠蔽(いんぺい)」を否定した特別監察委員会の調査は明らかに不十分だった。にもかかわらず、国会は真相解明の任務を果たしていない。

 衆院議員の任期は4年だ。選挙で掲げた公約を任期中に実現するために努力するのが、本来の姿である。まだ、その折り返し点にも達していない時期に「解散風」を吹かせる首相や自民党幹部、それに右往左往する議員の振る舞いは、選挙を有利に運びたいという私利私欲だけが先走り、日本の政治の貧困さを如実に物語っている。

 自民党は衆参両院選の大勝により圧倒的多数の議席を占めている。その「政治資産」を人口減少や加速する少子高齢化など首相自身が「国難」と呼ぶ政策課題にどれだけ振り向けてきたのか。いまは山積する懸案に本腰を入れて取り組むべきときである。与党はそれを肝に銘じてもらいたい。

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