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強制不妊訴訟違憲判断

2019年5月30日
◆国の責任なぜ問われないか◆

 旧優生保護法の下で知的障害を理由に不妊手術を強制されたと、宮城県の60代と70代の女性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は旧法を違憲とする判断を示した。しかし一方で、賠償責任を否定した国側の主張を認め、2人合わせて7150万円に上る請求を棄却。弁護団は控訴する意向を表明した。不妊手術を巡り全国の7地裁に起こされた一連の訴訟で初の判決だ。

不満くすぶる一時金

 手術励行の旗を振った国の責任がなぜ問われないのか。被害者は国家賠償法で補償を求めることができるから救済立法の義務はなかった、手術は40年以上前で提訴時に請求権が消滅する除斥期間20年は経過している-という国側の主張がほぼ認められた。原告には納得し難い結果になった。

 しかし違憲判断は重い。先に与野党の国会議員による議員立法で成立、即日施行された強制不妊救済法の「反省とおわび」の主体は「われわれ」となっており、国の責任は曖昧なままだ。一時金320万円も被害実態に見合っていないと不満はくすぶり続けている。

 与野党とも救済法の成立を急いだ。夏の参院選への影響を考慮したとされ、法案審議で被害者から直接話を聞く機会が一度も設けられなかったことへの不信感も根強い。謝罪と救済はどうあるべきか。国と国会は再検討すべきだ。

 旧法は1948年、戦後の食糧難や人口急増を背景に成立。「不良な子孫の出生防止」を目的に掲げ、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に不妊手術を認めた。本人や配偶者の同意がなくても、医師の申請を基に都道府県の優生保護審査会が「適」と判定すれば、手術はできた。96年に母体保護法に改めた際、不妊手術の規定は削除されたが、約2万5千人が手術を受けた。

救済法まで鈍い動き

 仙台訴訟で、原告側は強制手術について「自己決定権や法の下の平等などを侵害しており、憲法違反」とし、国は救済措置を怠ったと訴えた。旧厚生省内では、80年代後半に強制不妊手術について「人道的にも問題があるのでは」と改正の手順などを記した文書が作成されたり、「人権侵害も甚だしい」と廃止が提案されたりした。

 だが国は動こうとしなかった。2004年3月には当時の厚生労働相が国会で補償の必要性などを問われ「考えていきたい」と答弁したが、救済法ができるまで、それから15年余りを要した。

 判決は不妊手術について「不合理な理由で子を望む幸福を一方的に奪い去り、個人の尊厳を踏みにじる」とし、除斥期間の適用を認めながらも「本人が手術の客観的証拠を入手するのは困難で、20年が経過する前に賠償請求権を行使するのは困難だった」と述べた。

 国と国会はこうした事情に配慮しながら、被害者らの訴えに正面から向き合い、その思いに寄り添うことが求められている。

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