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国民投票法見直し

2019年5月24日
◆ネットCMの規制も課題だ◆

 衆院の憲法審査会で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の見直しの議論が行われている。自民、公明両党などは、公選法の規定に合わせて有権者の利便性を高める改正案を提出しており、早期の採決を求める。これに対して立憲民主党など野党は、テレビやラジオのCM規制強化に関する議論を要求し、対立が続いている。

 ただ、今の議論からは重要な論点が抜け落ちている。2007年の法制定から12年たち、当時は想定されず、今になって浮上してきた新たな課題への対処だ。利用が広がるインターネット上のCM規制はどうするのか。フェイクニュースの横行や、16年の米大統領選で起きた他国による選挙介入も想定される。

資金力の多寡が影響

 サイバー問題の専門家は「改憲の国民投票は有権者の賛否を二分しやすく、影響も大きいため、特別な注視が必要だ」と指摘する。国の形を定める憲法の改正に他国の介入を許すのは、国民主権が侵される事態と言える。国民投票の実施が具体化していない今のうちに、課題を洗い出して対処策を検討すべきだ。

 公選法にそろえる改正案は、投票日当日に駅や商業施設でも投票できる「共通投票所」を設けることなど7項目で、当然行うべき改正だ。しかし、立民なども内容には異論はなく、実際に国民投票が行われる段階になれば短期間で処理できる。急ぐ必要はない。

 一方、CM規制の在り方は国民投票が具体化する前に詰めておくべきだ。現行法では、14日前から投票日までの間は改憲案への賛否を呼び掛けるテレビ、ラジオのCMは禁止されるが、それ以前は自由だ。賛否どちらかの側が豊富な資金を使って大量のCMを流せば、投票行動に大きな影響を与える懸念が指摘される。

他国が介入する恐れ

 国民投票は活発な議論が国民の間で行われることを期待しており、投票運動は原則自由との考え方に立っている。しかし、資金の多寡によって運動量に差が出る事態を放置していいのか。表現の自由に配慮しながら、例えば運動できる団体を絞った上で使える資金に上限を設定するなどの方策を考えるべきだろう。

 今月開いた衆院憲法審ではCM以外の課題も検討すべきだとの意見が出た。一つはネットCMだ。ネットの広告費は昨年、地上波テレビの広告費にほぼ並んだ。多くの人がスマートフォンなどで情報を得る時代だ。ネットCMへの対処は必要だろう。

 他国による選挙介入は、欧州連合(EU)離脱の賛否を問うた英国の国民投票などでも疑われている。集票関連システムの妨害などの介入だけではない。会員制交流サイト(SNS)を通じて有権者の投票行動を誘導することも可能という。選挙介入はよその国の話ではない。日本も狙われるとの前提に立ち、議論すべきだ。

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