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北方領土巡る暴言

2019年5月16日
◆丸山議員即刻辞職すべきだ◆

 数ある政治家の失言、暴言の中で最低レベルだ。日本維新の会の丸山穂高衆院議員が、北方領土返還問題について元島民に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」などと質問し、元島民の抗議を受けて謝罪。その後、発言を撤回し離党届を提出したが、日本維新の会は受理せず除名処分とした。さらに、辞職勧告決議案の衆院への提出を与野党に呼び掛ける方針を決めている。

海外にも波紋広がる

 故郷の地が戦場になることなど望んでいるはずがない元島民に賛否を問いただす。こんな言動が、平和的な返還を辛抱強く待ち続けてきた元島民の気持ちをいかに踏みにじり、国民の怒りをどれだけ呼ぶものであるのか。日本維新の会代表の松井一郎大阪市長が議員辞職を求めたのは当然だ。

 波紋は国内にとどまらない。ロシア上院の国際問題委員長が、早速、「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と批判した。難航しているロシアとの北方領土返還交渉にも悪影響を与えるのは必至だ。国益をも損なった丸山氏の罪は限りなく大きい。即刻、議員を辞職すべきだ。

 丸山氏は、北方領土へのビザなし交流訪問団に参加。国後島の宿舎で酒に酔った上、元島民の大塚小弥太団長に「ロシアが混乱しているときに取り返すのはオッケーですか」と尋ねるとともに戦争による奪還への賛否を質問。大塚氏は「戦争なんて言葉は使いたくない」と返答したという。

 日本とロシアは、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速するとの安倍晋三首相とプーチン大統領の合意を受け、話し合いを進めているが、ラブロフ外相らが、北方四島は第2次大戦の結果として正式にロシア領になったと受け入れるよう要求して難航している。

返還交渉一層困難に

 10日、モスクワで行われた日ロ外相会談後の記者会見で、ラブロフ氏が、交渉を進めるには日本が第2次大戦の全ての結果を認める必要があると重ねて強調。河野太郎外相も「双方の立場の隔たりを克服できたわけではない」と述べざるを得なかった。

 そんな中での丸山氏の常軌を逸した言動である。菅義偉官房長官は14日の記者会見で「誠に遺憾だ。外交交渉によって北方領土問題の解決を目指す政府の方針に変わりはない」と述べるとともに「発言が事実だとすれば政府の立場とは全く異なるものであり、日ロ交渉に影響を与えるとは考えていない」と沈静化を図った。

 しかし、ロシア側の返還に反対する勢力や世論の姿勢が厳しくなるのは確実で、交渉はより一層、難しくなるだろう。

 このままでは日本の国会に戦争による領土奪還という考えが存在するとの印象を国際社会に与えかねない。戦後、築いてきた「平和国家」という日本のイメージを揺るがすことになるだろう。

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