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即位礼と憲法

2019年5月10日
◆時代と共に調和図る努力を◆

 天皇陛下は大型連休中に一般参賀で国民と対面され、参賀者は14万人余りに上った。祝賀ムードが広がる中、即位に伴う儀式や行事は年末まで続く。10月に皇居・宮殿に外国使節や駐日大使らを招き、即位を宣明する「即位礼正殿の儀」と、11月に執り行う「大嘗(だいじょう)祭(さい)」が特に重要な儀式となる。

 即位礼は、憲法の定めにより天皇が行う国事行為。一方、大嘗祭は皇室の私的な祭祀で、宗教的な儀式の色彩が強い。憲法の政教分離に照らし、政府は国事行為とはしなかったものの、皇位の世襲制を支える「公的性格」があるとして国費支出を決めている。しかし、ともに憲法違反の疑いがくすぶり続ける。

儀式「前例踏襲」通す

 皇位のしるしとされる三種の神器の一部などを受け継いだ「剣璽(けんじ)等承継の儀」も含め一連の儀式の内容を検討するに当たり、政府は「前例踏襲」を盾に異論を封印。議論らしい議論もないまま、ほぼ戦前の例に倣った。戦後に制定された現在の憲法との間に摩擦が生じるのは当然の成り行きだ。

 現代社会にそぐわない点も少なからず見受けられる。将来の代替わりも見据え、一人でも多くの国民がわだかまりなく祝えるようにするため、政府は異論と真摯(しんし)に向き合い、丁寧な議論と説明に取り組む必要がある。

 即位礼正殿の儀では、新天皇は古式装束を身にまとい、奈良時代から儀式に用いられ、神話に由来するとされる玉座の「高御座(たかみくら)」からお言葉を発し、それを見上げる形で立つ首相が国民を代表して祝辞を述べ、参列者とともに万歳三唱を行う。新皇后は「御(み)帳台(ちょうだい)」の上から見守る。このような上下関係の構図が国民主権の原則にふさわしくないという批判は根強い。

時代錯誤との批判も

 代替わりにより皇嗣(こうし)となった秋篠宮さまは昨年11月、宗教色が強い大嘗祭は皇室の公的活動費である「宮廷費」ではなく、私的経費の「内廷費」で費用を賄うべきだと問題提起をされた。

 12月には、宗教関係者らが大嘗祭や即位礼への国費支出は政教分離の原則を定めた憲法に反するとして、国に支出差し止めと損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。同様の訴訟は前回の代替わりの時もあり、請求は退けられている。

 ただ、1995年3月の大阪高裁判決は大嘗祭について「神道形式としての性格は明白。国家神道を利する効果がある」とし「政教分離に違反するのではないかとの疑義は一概に否定できない」と指摘している。

 しかし伝統重視を掲げる一部の保守派への配慮もあり、政府は前例に手を加えることを嫌う。剣璽等承継の儀を巡り、女性皇族が参列できないことに時代錯誤との批判もあったが、顧みようとはしなかった。伝統の重みを否定しようというのではない。とはいえ、時代の移り変わりとの間で調和を図る努力が求められる。

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