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大学スポーツ協会

2019年3月13日
◆利潤追求より安全な環境を◆

 大学スポーツの在り方が大きく変わるかもしれない。大変革に結びつかなくても、それぞれの大学や大学リーグ、各学生連盟が独自の考えで運営してきたスポーツがいくつかの統一された基準を整え、動きだすのは間違いない。今月、「大学スポーツ協会(UNIVAS)」が設立された。

 スポーツ庁の呼び掛けに197校が応じ加盟した。全日本大学野球連盟には381校が加盟しているから、設立時点でどうやら全国の半数ほどの大学が趣旨に賛同したと言えそうだ。

文武両道へ軌道修正

 競技別では31団体。学生数としては約10万人という。形態は一般社団法人だ。事業の柱は、スポーツと学業の両立を目指す▽けがや事故の防止に努め学生が安心して安全な活動ができる環境を整える▽商業的に魅力のあるチームと競技会を生み出す-の三つだ。

 学業の成績が悪ければ試合の出場を差し止めるという。大学の本来の在り方が崩れ、競技一辺倒の体育会路線が色濃く出ていた面があるから、文武両道への軌道修正を歓迎する関係者は多いだろう。

 言うまでもなくスポーツの基本は健康だ。日本大学アメリカンフットボール部が昨年起こした悪質タックル問題を振り返るとき、チームを支える大学のガバナンス(統治)の健全性にまで踏み込んだ安全管理について考える必要があるかもしれない。

 事業はいずれも全米大学体育協会(NCAA)を参考にしている。バスケットボールの絶大な人気に支えられ、大きな収入を上げているNCAAの利潤追求路線が日本の大学スポーツにとって、そのまま成功への道しるべとなるのか。ここは疑わしい。

事故防止の基準必要

 五輪の実施競技で優秀な選手は登録上、大学チームの一員ではあっても、日本の代表・代表候補選手として、競技団体のトップレベルのコーチによる指導を受けて国際競技会への遠征を繰り返すのが一般的になった。大学リーグの試合や学生連盟の大会に、こうした優秀な選手が出場しないケースは今後さらに増えるのではないか。

 テレビ放映やスポンサー企業にとって魅力的な大学のチームやリーグは一体どれほどあるだろう。放送権料を支払うテレビ局、広告料を出す協賛企業を見つけるのは至難の業だ。

 スポーツ庁はUNIVASの事業で、2019年度に約20億円の収入を見込む。政府が25年までにスポーツ市場を15兆円にまで拡大すると掲げた手前、スポーツ産業の新たな成長を促す必要もあって、このような目標を打ち出したのだろう。雲をつかむような話だ。

 事故防止を目指す共通のガイドラインや具体的なガバナンス整備の手引など、実用的な基準を次々と示し、縁の下の力持ちになればそれで良いのではないか。あまり野心的にならず、地に足の着いた支援を広げてほしい。

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