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トランプ政権3年目

2019年2月8日
◆難題迫る外交に警戒したい◆

 今年はトランプ政権が任期3年目に入り、2020年大統領選に向けた選挙戦が事実上始まる年である。トランプ氏と民主党の対立の激化が予測され、政治混乱の余波は米外交にも及ぶ。壁の建設こそが16年大統領選の公約の柱であり、20年の再選に向けた支持固めのため譲れないとするトランプ氏は、民主党との再度の対決を辞さない構えだ。これまで以上にトランプ政権の行方を警戒して対米関係に臨む必要がある。

国防費増強し力誇示

 トランプ氏は5日の一般教書演説で、メキシコ国境の壁建設問題など内政課題が停滞しているため、外交を業績として強調した。具体的には2度目の米朝首脳会談や中国との貿易赤字是正の見通しである。米大統領がアジア外交に熱意を持つのは歓迎したい。

 だが、見逃せないのは「力による平和」を信奉するトランプ氏だけに、軍拡を辞さない姿勢を鮮明にしたことだ。中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄に関連して、「米国はどの国よりもはるかに軍事費を使い、軍事技術の革新でも先頭に立つ」と宣言した。

 米国の国防予算はトランプ氏が就任して以来、連続して7千億ドル(約77兆円)以上になり、オバマ政権時代から1割増だ。トランプ氏は演説で国防費増強を「米軍再建のため」と説明したが、質量ともに強大な米軍をつくり、潜在的な敵国のロシアや中国を圧倒するという戦略が見える。軍事優先の考えは時代が逆戻りした印象だ。

 中国との貿易戦争では、米国の貿易赤字削減を優先させる意向を示した。中国経済の構造改革という、難しく同時に世界で期待が高まる交渉に興味を持っているようには見えない。軍拡によって力を誇示し、米朝、米中首脳会談など成果をアピールできる派手な外交への傾斜が明確になった。トランプ外交に振り回されることなく冷静に判断し対応していきたい。

幅広い関係構築急げ

 対中関係で、米国内には通信事業を中心に中国を孤立させるべきだとの認識が急速に広がっている。マティス国防長官が昨年末の辞任に当たってトランプ氏の同盟国軽視に苦言を呈したが、マティス氏ら国際派が政権から去った今、日本にも貿易や防衛問題で強硬策をぶつけてくる公算は大きい。

 米シンクタンクの研究では、トランプ政権のホワイトハウス高官の辞任・更迭率は過去の政権に比べて2倍に上っている。忠実であり思想傾向が似ている部下で政権を固めており、長期的な視野に立った熟議の上での政策立案・遂行からは程遠い。

 日本の対米外交は安倍晋三首相とトランプ氏の友人関係や同氏の娘婿クシュナー上級顧問とのパイプに頼ってきた。しかし政権の混乱が個人的な関係を機能不全にする事態も予想できる。トランプ氏の暴走を防ぐために共和党や民主党指導部、産業界など幅広い層との関係構築を急ぐべきだ。

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