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物価見通し引き下げ

2019年2月5日
◆日銀は目標が適正か見直せ◆

 日銀は2019年度の物価上昇率見通しを従来の1・4%から0・9%に引き下げた。このところの原油価格下落を反映させた下方修正だ。2%の目標達成は一段と困難な情勢になったと言える。一方で、米中両経済大国の景気減速や貿易紛争の激化などで世界経済は不透明感を増している。市場も昨年末以来、荒れ模様だ。日経平均株価が一時、大台の2万円を割り込んだほか、為替相場も円高に振れる局面が多くなった。

賃上げの姿勢も後退

 こうした中で、日銀は国債購入によって長期金利を0%程度に誘導する政策を継続しており、景気てこ入れのための政策の余地が極めて乏しくなっている。日銀は2%目標の妥当性も含め、現行政策の実効性や副作用について丹念に点検するべきだろう。

 黒田東彦総裁は物価見通しの引き下げについて、原因となった原油安による影響は一時的だとして、物価上昇に向けた勢いは維持されていると強調。先月公表された「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)は、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば引き上げの動きが広がるとした。

 しかし、直近の昨年12月の全国消費者物価指数は2カ月連続で上げ幅が縮小し、前年同月比0・7%にとどまっている。こうした状況からは、物価上昇への勢いは相当程度、そがれていると判断せざるを得ないのではないか。

 賃金水準に大きな影響を与える春闘も始動した。経団連は賃上げについては目標数値を示さず「選択肢」とした。安倍晋三首相が要請した「3%」を目安として指針に盛り込んでいた昨年と比べ、賃上げに対する姿勢が後退したことは明らかだ。さらに19年は携帯電話の通信料金が引き下げられる。

金融政策の効果限界

 こうした足元の賃金・物価情勢は日銀の説明とは、かけ離れてはいまいか。19、20年度の物価見通しの引き下げは今回で3回目だ。

 経済環境の変化で物価基調が変わることはあるだろうが、それにしても多すぎる。優れたエコノミストを多数抱える日銀がなぜ、こうも見通しを誤るのか。市場関係者の間では、日銀の「展望リポート」を「願望リポート」と呼ぶことがある。客観的な分析というより、希望的観測なのではないかという皮肉が込められている。

 日銀は、金融緩和を粘り強く続ければ、いずれ2%の目標は実現するとの認識だ。しかし、大規模緩和に乗り出して以降、明らかになったのは、金融政策が物価に及ぼす効果の限界ではないか。

 2%という目標、そのための具体的な政策手段は現在でも適正なのか。金融機関の収益悪化など顕著になってきた副作用も踏まえ検証することが必要だ。日銀は13年に2%目標を明記した共同声明を政府と交わしているが状況は大きく変わった。必要に応じ見直しを検討するべきだ。

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