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裁判員辞退率が上昇

2019年1月15日
◆期間短縮と負担軽減を図れ◆

 裁判員制度は2009年5月に導入され、ことし丸10年を迎える。全体として審理が長引く傾向にあり、サラリーマンや主婦ら一般市民から選ばれる裁判員の負担が増している。全国で、候補者に選ばれながら辞退した人の割合である辞退率は年々上昇。09年は53・1%だったが、18年は9月末時点で67・0%に達し、裁判員離れを懸念する声が広がりつつある。

公判日数が過去最長

 宮崎地裁では09年から18年10月末までに裁判員裁判制度で判決を受けた被告は74人で、435人が裁判員を務めた。辞退率は全国同様に上昇しており、当初50%台から12年に64・4%になって以降、60%台を推移。16年には宮崎市女性殺害事件の実審理日数(初公判から判決まで)が大幅に長くなったこともあり、辞退率は73・1%に上った。

 辞退率は、実審理日数に比例して上がる。17年は2日以内が58・4%に対し、10日67・3%、11日以上で71・5%。実審理期間は17年の平均が10・6日で、09年の3・7日の3倍近くになった。

 18年11月に神戸地裁姫路支部で元暴力団組員の男性ら3人の死亡に関与したとして被告に無期懲役の判決が言い渡された殺人・監禁致死事件の裁判は初公判から207日かかり、過去最長となった。それまで最長は16年11月に名古屋地裁で判決があった九頭竜湖女性殺害事件の160日だった。

 公判の回数も過去最多の70回を数えた。証人は80人に上り、ほぼ週4回のペースで開廷した。裁判員選任手続きでは、呼び出し状を送付された候補者501人のうち420人が辞退。18年4月の初公判後も、裁判員6人のうち3人が辞退を申し出て補充された。

区分審理の活用提案

 裁判員は多かれ少なかれ仕事や日常生活を犠牲にし、有罪か無罪か、死刑か無期懲役か-という重い判断と向き合うことになる。長期化を防ぐための工夫は随所に見られ始めたが、さらに審理の迅速化に道筋を付ける必要がある。

 青酸化合物を使った連続殺人事件で男性4人に対する殺人罪などに問われた被告の裁判員裁判を巡っては17年、京都地裁から呼び出しを受けた候補者586人のうち431人が辞退した。審理期間は135日だった。

 辞退率が高くなると、裁判員の構成に偏りが生じることも考えられる。これまで適用例はないが、審理が著しく長くなりそうなときは、裁判官のみで審理できるとする裁判員法の除外規定を柔軟に適用すべきだという意見もある。ただ、市民参加により多様な考え方を司法に反映させるという裁判員制度の趣旨を損なう恐れもあり、慎重な検討が必要だろう。

 被告が複数の事件で起訴された場合に、事件ごとに裁判員を入れ替える区分審理の活用も提案されている。審理の充実と期間短縮による負担軽減の両立に向けて一層知恵を絞りたい。

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