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米中対立と北朝鮮

2019年1月10日
◆2大国は健全な競い合いを◆

 米中が対立したままでは、国際政治も経済も視界が開けない。

 そんな思いを抱かせる年明けだ。市場の乱高下や中国景気の鈍化は世界を不安に陥れる。二大経済大国が貿易戦争に突入したのだから、企業家心理が萎縮し投資が停滞するのは当然だ。米中の緊張を理由としたアップルショックで日本も円高株安の荒波を受けた。

 世界銀行は、世界貿易の伸び率を今年は前年比3・6%とし、昨年6月時点から0・6ポイント下方修正した。米中貿易戦争で「減速は想定以上に顕著」と指摘している。

国交樹立から40年目

 そんな中、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長がトランプ米大統領との再会談に向けての政策調整のために4度目の訪中を行った。だが北朝鮮の「非核化」に影響力を持つ中国が米国と対立していては、北朝鮮への圧力は弱くならざるを得ない。習近平・中国国家主席は北朝鮮の核問題を米国からの攻勢をかわすカードとして使おうとしてもおかしくない。

 米国と中国は1月1日に国交樹立からちょうど40年を迎えた。米ソ冷戦時代、米国と中国が結びつきソ連を孤立させるという戦略が背景にあった。改革・開放を進める中国を米国や日本など西側諸国は応援し、民主化運動や少数民族への弾圧など強権的な体制を重大視せずに受け入れてきた。米国や日本の多くの人々は「中国はやがて民主化する」と期待していた。

 しかし、「対ソ同盟」を築いた米国と中国は今、「新冷戦」に突入したように見える。貿易だけでなく、中国による知的財産権の「窃取」や技術の強制移転、そして軍事力の競い合いといった全面的な争いに発展した。

非核化の行方は混沌

 この米中の対立を意識してだろう。金正恩氏は新年の辞で、朝鮮半島の平和体制構築のため朝鮮戦争休戦協定当事国による多国間協議を提案した。朝鮮半島の将来を巡り中国が関与する場を設けて中国を喜ばせ、味方として対米交渉に引き込む思惑ではないか。

 米中関係が冷え込み始めた昨年夏から、北朝鮮の「非核化」の歩みが止まった。北朝鮮が中国を頼みとして強気に転じた可能性がある。北朝鮮は米国が経済制裁を緩和しないことへのいら立ちを表明し、中国もその不満に理解を示している。米中の貿易戦争と米朝の核問題交渉が重なったことで、駆け引きはますます複雑となり、「非核化」の行方は混沌(こんとん)としている。

 北京で開催された米中次官級の貿易協議は、中国が米国から追加輸入する物品などを話し合った。関税合戦は世界経済を大きく損なうのだから、対立収拾の第一歩としてぜひ合意に達してほしい。

 世界一の地位を争う米中の競い合いは宿命的なものだ。既成の大国に新興大国が挑むのも、歴史の常だ。だが、平和的で世界を混乱させない秩序だった健全な競争であってほしい。

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