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中国の人権侵害

2018年12月28日
◆国際社会は民主化促したい◆

 中国の故劉暁波氏ら民主派知識人が2008年12月の世界人権宣言60周年に合わせ、全面的な民主化を呼び掛けた「〇八憲章」をインターネットで発表して10年がたった。この間、中国の民主状況は悪化の一途をたどってきた。

 同憲章は自由、平等、人権を「人類の普遍的な価値」とし、共産党一党支配の廃止と多党制導入など抜本的な政治改革を訴えたが、中国指導部は「共産党政権の堅持」を最重点として政治的引き締めを強めてきた。

反体制を厳しく弾圧

 中国の非民主的な政治体制は、強引な対外進出と並ぶ各国の懸念要素だ。地球的な共生を目指すなら、自由や民主主義の価値は広く共有されるべきだ。中国は01年の世界貿易機関(WTO)加盟で経済成長に弾みを付け、08年8月、北京五輪を開催し、新興大国の存在を世界にアピールした。劉氏らは〇八憲章で(1)主権在民の憲法に改正(2)三権分立(3)議会選挙、司法の独立-を打ち出し、ネット上で1万人以上の賛同署名を得た。

 だが、拘束された劉氏は国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受け、服役中の昨年7月、肝臓がんのため死去。10年に獄中でノーベル平和賞を受賞したが、中国は普遍的価値を認めず、民主派を弾圧。12年、トップの座に就いた習近平国家主席は共産党政権の堅持を核とする国家安全戦略綱要を策定し、人権派弁護士ら約300人の一斉摘発、少数民族運動への弾圧、言論統制を容赦なく進めた。

 近年、中国当局は新疆ウイグル自治区で、過激思想を持つとみなしたウイグル族を大量に拘束。国連人種差別撤廃委員会は即時解放を勧告した。自治区では、監視カメラや顔認証、人工知能(AI)、ビッグデータを駆使した強力な監視網が構築されている。

日本人もスパイ容疑

 中国はシルクロード経済圏構想「一帯一路」で対外進出を図る。中国の国家主義的な政治経済モデルが発展途上国に広がれば、「デジタル統制」による人権侵害も“輸出”されてしまう恐れがある。

 中国では15年以降、8人の日本人がスパイ容疑で拘束、起訴され、今年7月以降、うち3人が実刑判決を受けた。国家安全工作重視の結果とみられるが、被告の人権が守られたのか、冤罪(えんざい)ではないのか、気掛かりだ。

 来年は、中国軍が武力で民主化運動を弾圧した天安門事件30年(6月)、ウイグル大暴動10年(7月)、建国70周年(10月)の節目。中国はこれまで以上に治安維持に重点を置き、締め付けを強める可能性が大きい。

 米トランプ政権は貿易摩擦、安全保障だけでなく人権問題でも中国に注文を付け始めた。欧州連合(EU)も中国と人権対話を実施し、安倍晋三首相は10月下旬の中国首脳との会談で、対ウイグル族政策や日本人スパイの問題で懸念を伝えた。国際社会は粘り強く、中国の民主化を促していきたい。

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