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強制不妊被害の救済

2018年12月26日
◆国策で進めた責任の検証を◆

 旧優生保護法(1948~96年)に基づき、知的障害などを理由に2万5千人もの人たちに施された不妊手術を巡り、与野党の国会議員が「おわび」と一時金の支給を柱とする被害者救済法案の基本方針を取りまとめた。今後、一時金の額など法案の細部を協議し、来年4月ごろ通常国会に議員立法で提出して早期成立を目指したいとしている。

違憲性に触れず謝罪

 これまで仙台、札幌、東京、大阪、神戸、熊本の各地裁で計15人が国に損害賠償を求め提訴。旧法の違憲性を主張し、救済を怠った国の責任を追及している。国側は「当時は適法だった」とし、裁判所から違憲性について認否を明らかにするよう求められても、応じていない。

 そうした中、基本方針は違憲性には触れず、国ではなく「われわれ」が反省し、被害者におわびをするとした。われわれには政府や国会も含むと説明されるが、国による明確な謝罪を求める当事者との間には大きな隔たりがある。

 旧法の廃止から既に22年がたち、当事者たちは高齢となった。早期救済に向け、ようやく前進したことは評価できる。ただ重大な人権侵害を巡る謝罪と救済の在り方、国策として強制不妊が進められた経緯と責任の検証も含め、当事者の思いに応えるべきだ。

 旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に、知的障害などの遺伝を防ぐため本人や配偶者の同意を得て不妊手術を行うとし、同意なしの手術も認めた。だまして手術を受けさせても許されると当時の厚生省が旗を振り、各自治体は競い合うように実績を積み上げた。2万5千人のうち1万6500人は同意なしの手術だった。

厚労省の審査は問題

 基本方針によると、被害認定と一時金支給は本人のみが申請できる。本人が形式的に手術に同意した例も含め、専門家による認定審査会が判断。手術記録が残っていない人も除外しない。ただ審査会は厚生労働省に置かれる。この問題を長年置き去りにしてきた側に認定を委ねる形になり、反発がある。国から独立した第三者機関が審査を担う仕組みにできないか。

 また自治体の記録などで対象者と特定されても、個別に通知することはしない。周囲に知られたくない人もいるとの理由からで、各自治体に相談窓口を設けるなどして制度を周知するという。しかし、障害のため被害を自覚していない、頼りにできる人がいないといったケースもある。幅広い救済を目指すなら、自治体が職員を派遣し申請を促すなど検討が必要だ。

 基本方針には「問題の経緯や被害実態の調査」を検討することも盛り込まれた。といっても、与党幹部は「当時は必要と考えられた法律で、犯人捜しはできない」としており、責任の所在をはっきりさせる検証作業につながるかは不透明だ。過ちを繰り返さないため、徹底検証が求められる。

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