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防衛計画の大綱

2018年12月25日
◆「専守防衛」の有名無実化だ◆

 安倍政権の軍備拡張路線が鮮明になった。閣議決定した新たな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画は宇宙、サイバー、電磁波といった新領域への対応を前面に打ち出し、憲法に沿った「専守防衛」を有名無実化する装備が並んだ。重大な問題をはらんでいる。

 F35B最新鋭ステルス戦闘機を想定し、短距離離陸と垂直着陸が可能な戦闘機を導入。これを艦上で離着陸させるために護衛艦「いずも」も改修する。この二つを一体運用すれば、自衛隊は外洋で他国への攻撃が可能になる。集団的自衛権の行使を認めた安保法制に続き、憲法改正を先取りした既成事実の積み重ねと映る。

他国の不信招く詭弁

 これまで政府は、憲法で認められる「自衛のための必要最小限度の範囲」を超えるとして「攻撃型空母」を保有しない方針を貫いてきた。岩屋毅防衛相は「航空機を時々の任務に応じて搭載するのは、決して攻撃型空母に当たらない」と説明。呼称は「空母」ではなく、従来の「多機能の護衛艦」とした。これは詭弁(きべん)ではないか。

 常に搭載しなくとも、自国を守るためだけに戦う専守防衛を超える能力であることに疑いの余地はない。敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイルの導入も同じで、「敵基地攻撃能力」である。しかし、政府はその文言を盛り込んでいない。実態があるのに否定する姿勢は国民を欺くばかりか、他国からの不信を招く。

 大綱の基本概念に掲げた「多次元統合防衛力」にも疑問符が付く。陸海空に宇宙、サイバーといった新領域を加え、一体運用を目指すといい、安倍晋三首相は「陸海空という発想から完全に脱却し、従来とは抜本的に異なる速度で改革しなければならない」と力説した。

外交で埋める努力を

 だが、陸海空各自衛隊の定員や予算配分は硬直的だ。陸自の定員は15万人で、4万7千人近くの空自と4万5千人超の海自をしのぐ。予算配分も陸自4割強、海自と空自が各3割弱の比率は大きく変わらない見通しだ。

 海と空での抑止に比重が移っているのに、陸自にこれだけの要員と予算を配分する必要があるのか。陸海空各自衛隊の縦割りに切り込む抜本的な改革こそ不可欠だ。

 見逃せないのは、米政府の対外有償軍事援助(FMS)に基づく米国製装備品の大量購入だ。米側の提示額を日本が受け入れる仕組みで、最長10年に及ぶ分割払い。このまま米側の売り込みに呼応して買い続ければ自転車操業が加速し、社会保障をはじめ国家財政に重大な影響を及ぼすだろう。

 安倍政権では中国の軍事的な台頭に対応する必要性を説く声が強いが、その軍拡に合わせていれば日本の防衛費は際限がなくなる。軍事力の差は外交の力で埋めていくべきだ。専守防衛を逸脱せず、身の丈に合った防衛力を整備しない限り、日本は国防偏重のいびつな国家になりかねない。

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