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ゴーン前会長再逮捕

2018年12月22日
◆慎重かつ徹底的な捜査必要◆

 東京地検特捜部は日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者を会社法の特別背任容疑で再逮捕した。役員報酬の虚偽記載事件で東京地裁が勾留延長請求を却下した翌日、捜査は急展開。「カリスマ経営者」の会社私物化に及んだ。

 特捜部は先月19日、2011年3月期~15年3月期に前会長の役員報酬を過少に記載したとする金融商品取引法の虚偽記載容疑で前会長と前代表取締役を逮捕。今月10日には16年3月期~18年3月期について同じ容疑で2人を再逮捕して勾留延長を請求したが、東京地裁はこれを認めない極めて異例の決定をした。

特別背任は「実質犯」

 最初の逮捕容疑と構図はほぼ同じ。前会長らは報酬隠しの認識を否認したが事実関係はほぼ認めており、地裁はこれ以上の勾留必要なしと結論付けたとみられる。特捜部は決定を不服として準抗告。しかし、それも棄却され前会長保釈の見通しが強まる中で一転、3回目の逮捕に踏み切った。ただ、否認すれば勾留が長引く「人質司法」や弁護人不在の取り調べを巡り、海外で批判が高まっていることは忘れてはならない。また今回の逮捕は日産やルノーの今後に大きく影響するとみられ、慎重かつ徹底した捜査が求められる。

 ゴーン前会長と前代表取締役による前会長の報酬を巡る虚偽記載は91億円余り。巨額ではあるが逮捕の必要まではない「形式犯」にすぎないとの見方もあり、疑問の声が上がっていた。そうした中、特別背任という「実質犯」の立件に乗り出した意味は大きい。

 再逮捕容疑は、08年10月ごろ、リーマン・ショックが原因で私的なスワップ取引に発生した約18億5千万円の損失を負担する義務を日産側に負わせ、さらに後に取引の主体を前会長側に戻した際の協力者の関連口座に16億円余りを入金させ日産に損害を与えた-というもの。特別背任罪の公訴時効は7年だが、海外にいる間は時効停止するため成立していなかった。

高額報酬に株主不満

 08年はリーマン・ショックで世界的に新車販売が落ち込み、日産も09年3月期決算で2337億円に上る巨額の赤字を出した。高額な役員報酬に株主から不満が噴き出し、当時社長だった前会長が株主総会で謝罪。そんな時期に、自らの損失を日産に付け替えていたことが事実なら、重大な背信行為といえる。

 虚偽記載事件で、日産とルノーの対応は分かれた。前会長は日産からその職を解かれたが、ルノーでは会長職にとどまったままだ。日産の筆頭株主のルノーは日産の後任会長人事などで主導権を握ろうとして、水面下で両者の駆け引きが激しさを増している。ルノーは筆頭株主のフランス政府の意向を受けている。

 特捜部は、勾留請求の却下に反発して特別背任事件の捜査に着手したととられることがないよう気を配る必要もあろう。

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