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税制改正大綱

2018年12月21日
◆過度な負担軽減は再考せよ◆

 与党が決定した2019年度税制改正大綱は、自動車や住宅関連の減税を中心に、消費税増税による景気減速を防ぐ対策に力点を置いた内容になった。来年10月に予定される消費税増税は財政再建に向けた一里塚だ。前回、税率を引き上げた14年は、家計負担の増大によって消費が冷え込み深刻な景気減速を招いた。こうした事態を回避するために、一定程度の負担軽減は必要だろう。しかし、増税対策はこのほか、飲食料品などが対象の軽減税率、キャッシュレス決済でのポイント還元、プレミアム付き商品券などもある。これらを併せると、増税による歳入増効果を相殺しかねない規模になる。

縮小や停止も検討を

 14年の二の舞だけは回避したいというのが政府の狙いだろう。景気の腰折れを防ぐことは重要だが、必要以上の対策を漫然と続ける余裕は日本にはない。一連の対策については、増税実施前後の景気動向を綿密に点検し、対策の必要性が減ったと判断できる場合には、規定された政策実施期間内であっても縮小や停止を検討することも視野に入れるべきだ。

 政府は今回、家計負担を軽減することで消費税増税の円滑化を図ろうとしている。だが、この手法は持続可能だろうか。今後、10%超への税率引き上げについての検討は避けられないが、引き上げのたびに家計負担の軽減を実施すれば、増税と減税のいたちごっこのような状態が続き、税制がさらに複雑になってしまう。これは健全な財政運営とは言えない。

 負担を軽減するばかりではない。なぜ、その負担が必要なのか、その理由について理解を求める努力が今後さらに重要になる。財政赤字の規模、社会保障政策の現状と見通し、負担が将来世代に先送りされる構造などについてのデータを分かりやすく示した上で、議論を深める作業を進めたい。

求められる情報発信

 日銀の大規模緩和による低金利が続く金融市場の動向と財政運営の関係などについても、財政当局は情報発信をさらに強化する必要がある。研究者の間で見解が異なる問題も多いが、それも含めて議論のたたき台としたい。

 今回、負担軽減の柱となった自動車関連税制について、大綱には抜本改革方針が盛り込まれた。激変する経済社会を見据えた中長期的な取り組みと言える。具体策は20年度以降になるが、電気自動車(EV)やカーシェアリングの広がりに対応し、課税の基本的な考え方を「保有」から「利用」に変更、走行距離などに着目した制度設計になる見通しだ。

 自動車産業の在り方、環境対策、人々の意識や生活の変化などをどう考えるかが重要になる。大規模な作業になるが、税制の根幹である「公平、中立、簡素」から外れてはならない。税制は歳入確保の手段であるとともに、社会をあるべき姿に誘導する政策でもある。国民的な議論につなげたい。

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