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米中間選挙

2018年11月8日
◆「短絡的」トランプ政治懸念◆

 トランプ米大統領の分断を深める統治スタイルに多くの国民がノーを突きつけた。この選挙が示すものは、トランプ氏の政権基盤の弱体化と、米国が世界のリーダーとして復活するのか、それとも国際社会に背を向け続けるのか、依然混乱が続くという現実だ。

 国際社会は引き続き米国の指導力に期待できない。日本はトランプ氏に引きずられることなく、自由貿易、国際主義、平和主義など日本の原則を米国に向かって主張し続ける必要がある。

大衆迎合主義の典型

 トランプ氏への審判となったこの中間選挙には、事前投票者が激増するなど国民は切実な関心を寄せた。各界で明らかになったセクハラ問題を受けた女性の意識の高まりやミレニアルと呼ばれる若者世代のかつてない参加が原因と指摘される。移民や人種・民族問題を道具としたトランプ氏の分断戦略への不満が浮き彫りになった。

 トランプ氏の分断戦略は徹底していた。中間選挙で大統領は熱心な肩入れを控えるのが慣例だが、トランプ氏は頻繁に激戦州を訪れ、移民の恐怖をあおることで、共和党への投票を求めた。

 国民投票で英国が欧州連合(EU)離脱を決めたのも、ドイツのメルケル首相が政界引退表明に追い込まれたのも、流入する移民・難民への不安が背景にある。トランプ氏は、移民への恐怖と憎悪という国民心理の弱さにつけ込んだ。

 典型的なポピュリズム(大衆迎合主義)の手法だが、移民問題を解決する具体策が示されない限りは、多くの有権者がトランプ氏と共和党を支持し続ける。

 選挙戦でもう一つ目立ったのはトランプ氏の演説での虚偽の多さだ。「米国に向かう中南米系移民の波には中東の人々が含まれている」「民主党は医療保険受益者から権利を奪う」「自分は最も人気のある大統領の一人だ」などの発言はいずれも事実と異なるが、トランプ氏は気にかけず、米政治の劣化を印象付けた。

再選向け一層の分断

 米国は2020年大統領選に向けた選挙戦に事実上突入する。トランプ氏は再選に向けて一層の分断戦略に走るだろう。対抗する民主党は多数派となった下院を拠点に、予算などの法案の成立阻止に動き、ロシア疑惑やトランプ氏の他のスキャンダルなどの追及で、政策そっちのけで「トランプたたき」にまい進するとみられる。

 国内の基盤が揺らぎ内政がまひするトランプ氏は外交に活路を見いだす可能性がある。だが中国との貿易戦争や北朝鮮の非核化問題、ロシアとの核軍拡競争の兆しなど、米国の外交は難航しており、成果をすぐに生み出せる状況ではない。

 トランプ氏は強さや成果をアピールするために、緊張をエスカレートさせたり、性急に合意したりする短絡的な政策に出る懸念がある。今まで以上の粘り強い対米説得が日本の役割だ。

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