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外国人就労拡大

2018年11月6日
◆禍根残さぬよう説明尽くせ◆

 政府は新たな在留資格を設け外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案を閣議決定し、国会に提出した。深刻な人手不足を背景に、これまで医師や研究者など「高度な専門人材」に限ってきた在留資格を単純労働を含む分野でも解禁。在留期間の更新を重ねれば永住も可能になる。来年4月の導入を目指す方針だ。

 関係省庁は来年度の1年間に新制度の下で受け入れる外国人を14業種で計約4万人と想定しているとされ、将来的に数十万人規模になるとみられる。歴史的な政策転換であり、社会のありようにも大きな影響を及ぼすだろう。ただ肝心の受け入れ業種や人数は正式には何も決まっていない。

制度設計は検討段階

 政府はこれらを法案成立後に省令で定めるとしている。さらに日本語教育の充実や生活支援などもいまだ検討段階で、制度設計の全体像が見えてこない。野党だけでなく、与党からも「生煮え」との批判が続出。外国人に対する年金や医療費など社会保障を巡る疑問や、不法滞在者の増加と治安悪化などへの不安も広がっている。

 新設する在留資格は「特定技能」。一定の知識と経験を要する業務に就く1号と、熟練した技能が必要な業務に就く2号とがあり、1号の在留期間は通算5年で家族の帯同は認めない。2号は在留期間の更新を重ねて永住できる可能性があり、家族帯同も認める。また1号については、技能実習生が3年の実習を終えると、無試験で資格を取得できるようにする。

 受け入れの大半は1号が占めるとみられ、政府は対象となる業種として建設や介護などを検討している。だが現時点で制度の詳細は固まっていない。先に衆院予算委員会で山下貴司法相は「極めて深刻な人材不足に対応するための新たな制度だ」と改正案の意義を強調したが、受け入れ人数の見通しをただされても「数値として上限を設けることは考えていない」と説明しただけだった。

「安価な労働力」懸念

 どの分野で、どれだけの人数が必要なのかも「精査中」とした。このほか、受け入れ先の企業などに日本人と同等以上の報酬を求めるともしているが、具体策はまだ明らかにされていない。

 これまで日本は専門人材以外の単純労働の担い手を1993年に始まった外国人技能実習制度で来日する実習生と留学生に求めてきた。だが実習生は習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらうとうたう制度の下で実際には「安価な労働力」として酷使され、違法残業や賃金不払いなどが後を絶たない。予算委審議でも、実習生の失踪が今年1~6月で4279人に上ると明らかにされた。

 この状況を脇に置いて新制度に移行するのは無責任というほかない。来年の統一地方選や参院選をにらみ、実績にしたいとの思惑ものぞくが、このまま突き進むなら将来に禍根を残すだろう。

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