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日中首脳会談

2018年10月31日
◆関係改善進め共生図りたい◆

 安倍晋三首相は中国の李克強首相と会談し、第三国のインフラ開発や海難救助など幅広い分野での協力強化に合意した。習近平国家主席との会談では、来年の訪日を要請し、習氏は「真剣に検討したい」と答えた。日本の首相が中国を公式訪問するのは約7年ぶり。日中平和友好条約締結40周年に合わせた訪中により、2012年9月の尖閣諸島国有化で著しく悪化した日中関係の改善がより一層進んだことを歓迎したい。

経済圏構想を後押し

 しかし、東・南シナ海の対立は解消されず、中国の非民主的な強権体制も懸念される。中国台頭の新時代に共生を図るには、安全保障や政治面の信頼醸成に向け、冷静で率直な対話を粘り強く続ける必要がある。

 両首相は会談で、金融システム安定のための通貨交換協定の再開や、先端技術と知的財産権保護で協力を進める「イノベーション協力対話」の設立などを確認。経済を柱とした関係強化の動きを鮮明にした。

 同時に北京で開かれた「第三国市場協力フォーラム」には日中の企業経営者ら約1200人が参加、50件以上の覚書が締結された。習氏が推進する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を後押しする形だ。

 同構想については、中国の発展途上国への多額の経済援助や軍事拠点の拡大で影響力が増すことへの警戒も根強い。だが、一帯一路を含む経済協力は公正なルールの下で進めれば、相互の利益となり関係を深められる。「開放性や透明性を前提」(安倍首相)としながら積極的に推進したい。

軍事拠点化に警戒も

 また両首相は海難事故時の協力を定めた海上捜索・救助(SAR)協定を締結、偶発的な武力衝突を回避する海空連絡メカニズムのホットライン早期開設に取り組み、東シナ海を「平和、協力、友好の海」とすることでも一致した。こうした緊張緩和の動きも評価できる。

 しかし、中国の公船は月2日程度だが、尖閣の領海に侵入して「領有」をアピール。中国はフィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海で大規模な埋め立てや軍事拠点化を進め、周辺国や日米と対立している。安倍首相は関係改善のため南シナ海問題での対中批判を封印しているが、再開すれば、今の米中と同様に激しい論争になるのは必至だ。

 習氏は「グローバルな統治体系をより公正で合理的な方向に発展させる」として米国中心の世界を変革する外交方針を示した。日米は台頭する中国の覇権主義を警戒し、中国は日米の対中封じ込めを疑う。国際社会にとって中国が平和と国際協調を重んじ、政治的に民主化され、経済が安定した国になることが望ましい。日本は対中関係を強化し、中国が歓迎される新興大国の方向へ進むよう戦略的な働き掛けを行っていくべきだ。

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