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辺野古対抗措置

2018年10月23日
◆対立深め日米同盟揺るがす◆

 沖縄の民意を踏みにじる対抗措置は対立をさらに深め、日米同盟の基盤をも揺るがしかねない。政府の強硬策は事態の深刻化を招くものだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した県への対抗措置として防衛省は国土交通相に行政不服審査法に基づく審査を請求、撤回の効力停止を申し立てた。

民意との両立考えよ

 9月末の県知事選で辺野古移設反対を訴えて当選した玉城デニー知事は、今月12日の安倍晋三首相との初会談で打開策を探る対話を求めていた。首相は会談で「政府の立場に変わりはない」と述べ、わずか5日後に対抗措置に踏み切った。「辺野古移設が唯一の解決策」という結論ありきの対応だ。会談は対話のポーズを見せるだけだったということだ。

 政府としては効力停止の判断を得て、中断している工事を早期に再開し、埋め立ての土砂投入に踏み切る構えだろう。だが県側も対抗措置を取る方針で、法廷闘争につながる可能性が高い。

 岩屋毅防衛相は対抗措置を取った理由として、日米同盟の抑止力維持を挙げた。しかし県民の反発が強まり、沖縄の米軍基地全体に向かうようになれば、日米同盟を支える地域の基盤が揺らぐ。それは政府にとって本末転倒ではないか。日米同盟と、沖縄の民意を両立させる対応策を真摯(しんし)に考えるべきだ。

 承認撤回の措置は、2013年末に元知事が行った埋め立て承認後に判明した新たな事実を理由に、今年8月に県が行ったものだ。玉城知事は翁長雄志前知事の死去に伴って実施された県知事選で、承認撤回の支持を主張し、当選した。民意は明確になっている。

疑問残る審査請求

 防衛相は対抗措置に関して「市街地にある普天間飛行場の危険性除去と返還を一日も早く実現するため」と述べた。しかし、普天間飛行場の返還と辺野古移設はイコールではない。玉城氏は首相との会談で、日米同盟支持の立場から、普天間飛行場の早期返還を求めるのと同時に、辺野古に大規模な新基地を建設する必要が本当にあるのかを日米両政府と協議したいと申し入れている。

 沖縄には極東最大級の米空軍嘉手納基地があり、抑止力の中核となっている。普天間飛行場の米海兵隊はグアム移転の計画もあり、抑止力の観点からも配備の見直しが可能で、辺野古基地も不要だというのが玉城氏の主張だ。政府はその話し合いすら拒否し、既定路線を推し進めるのか。

 行政不服審査法に基づく請求にも疑問がある。この手続きは行政処分で不利益を受ける国民の救済が本来の趣旨だ。防衛省の請求を同じ政府内の国交相が審査するのでは、政府に都合のいい結論が出ると想定される。首相が繰り返す「県民の気持ちに寄り添う」という言葉がむなしく響く。

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