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社会保障

2018年10月19日
◆持続可能な制度へ改革せよ◆

 安倍晋三首相は第4次内閣改造を受けた記者会見で、「全世代型の社会保障改革」に今後3年間かけて取り組むと強調した。現行制度は高齢者に手厚い一方、現役世代は給付が手薄で負担は重い。少子高齢化が止まらない中、膨らみ続ける社会保障給付に国民の不安は増している。議論がスタートした政府税制調査会でも、この看板政策を後押しする方策が主要な論点となる。

年金給付抑制は急務

 将来世代に対し、持続可能な社会保障制度を引き継ぐ責任を果たすことを最優先にするべきだ。2022年には団塊世代が後期高齢者の仲間入りを始め、25年までに全員が75歳以上となる。給付と負担のバランスを取る見直しが欠かせない。「3年」という期限は後期高齢者の急増に備え、改革を仕上げるとの意気込みだろう。

 だが具体的な手だてとなると、首相がこれまでに言及した内容は心もとない。継続雇用の仕組みを65歳以上に広げ、年金の受給開始年齢について70歳を超えても選択できるように改めるというが、この年金改革案では財政効果は期待できない。

 年金で実現を急ぐべきは、少子高齢化に応じて給付を抑制する「マクロ経済スライド」の強化だ。デフレ時は実施しないルールで、これまでに適用は1回だけ。このため高齢者の給付水準は高止まりしており、その分、将来世代向けの給付が低下する。スライドの完全実施は年金改革の本命だ。

 医療や介護では、現役世代の負担が限界に近づいている。今年に入り、大規模な健康保険組合が高齢者医療向け拠出金の負担に耐えかね、解散を決めるケースが相次いだ。75歳以上の医療費の窓口負担は原則1割だが、2割への引き上げも検討課題になりそうだ。

財政と一体的検討を

 来年10月には消費税率が10%に引き上げられる。税や社会保障の負担議論は「来夏の参院選が終わるまで先送り」という声が政府や与党から漏れ聞こえるが、その場しのぎでは3年はあっという間に過ぎる。「10%後」を見据えさらなる税制改革を議論し、財源を確保する姿勢を明確にするべきだ。

 心配なのは、議論の進め方がはっきりしない点だ。社会保障改革の前提となる雇用制度見直しは未来投資会議が主導するようだが、成長戦略としての色合いが濃い。財政確保策を含め、財政と社会保障を一体的に検討する場が必要ではないか。

 政府の将来推計では、高齢者数がピークに近づく40年度の社会保障給付費は190兆円。名目値だと現在の121兆円の1・6倍で絶望的な数字に映るが、推計は国内総生産(GDP)も伸びる前提なので対GDP比では1・1倍増だ。税などの負担を1割引き上げれば制度維持は可能な次元と言える。過度に悲観しては政策を誤る。冷静にかつ迅速に、改革を進めてほしい。

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