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消費税引き上げ表明

2018年10月18日
◆財政再建への展望が必要だ◆

 安倍晋三首相が、消費税率を予定通り2019年10月に現行8%から10%に引き上げる方針を改めて表明した。これまで2回、引き上げを延期した首相だけに、今回も延期する可能性が指摘されていたが、よほどのことがない限り実施されることになった。しかし、10%への増税でも財政健全化は楽観視できない。あくまでも、財政再建に向けた一歩に過ぎない。当面は消費減退を回避するための財政、税制措置の具体化が課題になる。同時に、財政再建に向けた中長期的な展望も不可欠だ。

収支黒字化を確実に

 政策経費を税収などの基本的収入でどこまで賄えているかを示す基礎的財政収支の黒字化について政府は当初目標としてきた20年度を断念、25年度に遅らせている。しかし、これの実現さえも危ぶまれているのが今の財政の姿だ。25年度の黒字化を確実にし、国内総生産(GDP)比で240%にも積み上がった債務を着実に削減していかなければならない。

 今は低金利だから巨額の借金に伴う利払い費は比較的少額にとどまっているが、日銀による大規模金融緩和が金利を抑え込んで実現している不自然で危うい均衡だ。いずれ、金融政策は正常に戻る。連動して金利も上がる。そうなれば利払い費は当然増える。

 財政再建のめどが立たないうちに金融政策が正常化に向かい始めれば、市場は日本の財政運営にさらに厳しい目を向けるだろう。日本国債の信認が傷つくのは避けられず、悪循環に陥ってしまう。

 政府はこうした事態を避けるために全力を尽くさなければならない。作業が本格化してきた19年度予算案の編成、税制改正を活用すべきだ。単年度の収支を整えるだけで終わらせてはならない。

具体的な痛み説明を

 少子高齢化の進展や財政の逼迫(ひっぱく)を考えれば、現在の政策体系に持続可能性が極めて乏しいのは明らかだ。では一体、どれだけ負担が増えるのか、どの行政サービスで公費投入を減らすのか。それはいつからなのか、その負担は所得水準や家族構成などの観点から公平、公正なのか。国民が知りたいのは、具体的な痛みの内容だ。

 しかし、首相が議長を務める経済財政諮問会議は、社会保障費抑制に向けた負担増や給付削減に関する議論を来夏の参院選後に先送りするという。新たな負担の論議は選挙に不利になるとの判断があるのかもしれないが、そんな悠長なことは言っていられない。強く再考を求めたい。

 政権与党は参院選で自動車や住宅関連の優遇税制など消費税増税に伴う負担軽減策を訴えるつもりかもしれない。しかし、肝心なのは社会保障経費の具体的な抑制策だ。これを明示しなければ説明責任を果たしたとは言えない。消費税は将来的に何%まで上げる必要があるのか。耳に痛いことを避け、心地よいことばかり訴えるのはむしろ有権者への愚弄(ぐろう)だろう。

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