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離婚後の子巡る法改正

2018年10月6日
◆心情に配慮した運用必要だ◆

 離婚後の子どもを巡る争いをなくすため、法相の諮問機関である法制審議会は民事執行法の改正要綱案をまとめた。調停や審判によって裁判所から子どもの引き渡しを命じられても応じようとしなかったり、養育費の支払いを免れるために財産を隠したりするのを防ぐ手だてを講じる。混乱が後を絶たず、早期の見直しが求められていた。法務省は関連法改正案の早期国会提出を目指す。

引き渡しで親の争い

 新制度では、裁判所から子どもの引き渡しを命じられた親が現場にいなくても、引き取る側の親がいれば執行官が強制的に引き渡せるようにする。国境を越えた子どもの引き渡しを定めるハーグ条約実施法も同様に見直す。

 養育費を巡っては、債権者側の申し立てにより裁判所が金融機関や公的機関に、不払いを続ける相手方の預貯金、勤務先などの情報を照会し、提供を命じることができるようにして財産を差し押さえやすくする。犯罪被害者への賠償金不払いにも同じ仕組みが用いられる。いずれも、実効性確保に一定の効果が期待できる。

 ただ子どもは親の争いにショックを受け、ことに引き渡しともなれば、経験したこともないような強いストレスにさらされる。児童福祉の専門家などとも連携して、そうした心情に最大限配慮した運用が求められる。

 現行の民事執行法には、子どもの引き渡しに関する規定はない。一般の動産の引き渡しと同じように進められ、子どもを物扱いしているとの批判もあった。2014年に国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを取り決めたハーグ条約に日本が加盟すると、国内の引き渡しにブレーキがかかった。

養育費不払いに対応

 最高裁によると、17年に引き渡しを求めた107件中、実現したのは33%の35件。10年の48%から大幅に減った。条約加盟に伴い整備された実施法が引き渡し現場に同居する親がいるのを要件にし、これが国内の引き渡しでも事実上の要件になったためとみられる。

 法制審の民事執行法部会も当初、引き渡し現場に双方の親がいるのを要件とする方針だったが、子どもの前で親同士が口論したり、同居の親が身を隠したりする事例があり、最終的に引き取る側の親がいれば引き渡しは可能とした。

 もう一つの柱である養育費不払いなどを巡る裁判所の照会制度は、現行制度で不払い側の預貯金を差し押さえるには債権者側が自分で金融機関の支店などを特定する必要があり、現実的には難しい。裁判所が預貯金口座の有無と残高や勤務先などについて情報を集め、債権者側はそれを基に差し押さえを申し立てることができる。

 裁判所が出した結論をきちんと実行に移す仕組みが欠かせないが、その中で子どもの心情にいかに向き合うか。執行官の研修を拡充し、専門家との連携と役割分担なども検討する必要がある。

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