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内閣改造と党人事

2018年10月5日
◆国造りは政治不信払拭から◆

 自民党総裁選で、石破茂元幹事長に圧勝して連続3選を果たした安倍晋三首相が内閣改造と自民党役員人事を行った。その後の記者会見で安倍首相は人事の狙いを「新たな国造りの力強いスタートを切る」ためとした。学校法人「森友学園」問題、裁量労働制を巡る不適切データ問題などに関わった閣僚に政治的な責任を全く取らせないまま、安倍政権は改憲という「新たな国造り」に向かおうとしている。「新たな国」とはけじめが要らない国なのか。

首相の側近を要所に

 首をかしげざるを得ない布陣である。安倍首相の盟友である麻生太郎副総理兼財務相は、森友学園問題に関する決裁文書の改ざん事件を起こした財務省のトップであるにもかかわらず留任。次に家族ぐるみで親しい関係にある加藤勝信前厚生労働相を、不適切データの発覚によって批判が噴出した裁量労働制の問題を決着させ切れないまま、総務会長に昇格させた。

 いずれも、正確でなければならない公的な文書やデータを基にした議会制民主主義を揺るがす不祥事だった。所管する組織に取り返しがつかないような重大問題が起きた際は、辞任、交代などの形で政治的な責任を取り、一定のけじめをつけるのが閣僚の役目であろう。小泉進次郎衆院議員が改ざん事件発覚直後、「自民党は官僚だけに責任を押し付ける政党ではない」と指摘した通りだ。にもかかわらず、閣僚が責任を取らないまま要所に側近を置き、「安倍1強」体制の再始動となった。

 麻生、加藤両氏だけではない。西日本で記録的な大雨になる恐れがあると気象庁が厳重な警戒を呼び掛けた7月5日夜に開かれた自民党議員による飲み会の写真をツイッターなどに投稿して批判を浴びた西村康稔官房副長官が留任、片山さつき参院議員は地方創生担当相に起用された。

見通せない改憲論議

 安倍首相にとって「新たな国造り」とは、悲願である改憲の実現を意味しているのは間違いない。長年の安倍首相の「お友達」として知られる下村博文元文部科学相を党憲法改正推進本部長に配した。「下村憲法改正推進本部長-加藤総務会長-森山裕国対委員長」のラインで、党憲法改正案の早期の国会提出を目指すとみられる。

 安倍首相は早ければ来年の通常国会で改憲発議にこぎ着け、夏にも国民投票を実施する日程を描く。改憲に向け、連立を組む公明党、野党にも理解を広げたいとしているが、公明党は改憲案提出前の与党協議に応じない姿勢を崩していない。同党とのパイプ役だった高村正彦氏を自民党副総裁から外したことにもいぶかる声が出ており、道筋は見通せない。

 森友、加計学園問題、障害者雇用の水増し問題、文部科学省の汚職事件などで高まった政治不信をどう払拭(ふっしょく)するか。改憲論議を加速させる前に、やるべき事があるのではないか。

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