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貴乃花親方退職

2018年10月4日
◆新規定は多様な意見妨げる◆

 大相撲の貴乃花親方が日本相撲協会に退職を届け出たのを受け、同協会は1日、臨時理事会を開き、退職を承認した。貴乃花部屋に所属する力士らの千賀ノ浦部屋への移籍も認めた。これにより貴乃花親方の実父である故二子山親方が創設した旧藤島部屋の流れをくむ貴乃花部屋は消滅することになった。妻の花田景子さんが宮崎市出身ということもあり、ゆかりが深い本県では突然の事態に驚きの声が広がった。

本県では合宿開催も

 椎葉村では2012年、椎葉厳島神社境内に屋根付き土俵が造成された。貴乃花部屋は同年から4年間、合宿を実施。16年の熊本地震以降は途絶えていたが、貴乃花親方は今年の合宿開催に意欲を示していたという。

 通算22回の優勝を誇り、一時代を築いた元横綱が角界を去る道を選んだ背景には、親方と協会執行部の双方が抱いていた根深い不信感がある。意見の食い違いが対立に発展し、多くのファンが悲しむ結末を迎えた印象だ。

 昨年10月に巡業先の酒席で弟子の貴ノ岩関が元横綱日馬富士から暴行を受けたとき、巡業部長だったにもかかわらず協会に報告せず警察に被害届を提出した。さらに協会の危機管理委員会による貴ノ岩関への聞き取りを師匠として拒否。こうした行動に対し、協会は巡業部長の職だけでなく理事解任を決定した。すると、貴乃花親方は協会の一連の対応には問題が多いとして、内閣府の公益認定等委員会に適切な是正措置を求める告発状を提出した。

 直後、自身の部屋の力士が付け人に暴力を振るう問題が浮上し、貴乃花親方は告発を取り下げたが、執行部は親方の責任を追及。貴乃花親方は、告発状の内容は事実無根であると認めるよう求められ「事実無根としなければ、親方を廃業せざるを得ないという有形無形の要請を受け続けた」とした。

歩み寄りの努力ない

 これまでの経緯で、協会の八角理事長(元横綱北勝海)と貴乃花親方が見解の相違を克服するための話し合いに臨んだ形跡はない。互いに関係の修復を図ろうと努力したとも聞かない。

 協会に限らず、競技団体が重要な問題に対応する、あるいは将来の進路を決定するに当たっては、意思決定の過程でさまざまな意見が上がり、活発な議論がなされ、意見集約が進むというのが健全で理想的な姿だ。異なる意見を尊重することは豊かな多様性を育む。

 引退決断の直接的な原因だった「全ての親方は五つの一門のいずれかに所属しなければならず、どの一門にも属さない無所属の親方は認められない」とする新規定はその点、多様な意見を吸い上げるには不都合だ。

 仲間内だけでの硬直した組織運営に陥る危険を排除するため、協会は今回の衝撃的な事態を受け止め、多様な異なる意見を尊重する姿勢を再度確認してほしい。

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